深夜のファミレスで
「え、じゃあ、井上さん、今晩、空いてるんですか?」
「どうかな。ちょっと見てみるね」
「えー、ほんとは空いてるんでしょ?」
「いやー、どうかなー」
「もうー」
「えーっとね、うん、行けそう」
「行けそうって、行けるんですか、行けないんですか」
「行けー…」
「けー…」
「ます!」
「やった!」
深夜のファミレスが一番いい。世の中を見ることができる。喧嘩をするカップル、走り回る子供、そしていちゃつくバイト。家に帰ったって誰もいないし、寝て起きてまた仕事に行くだけ。だから、こういう音に囲まれて、一日を終える。腹を立てたり共感したりして、自分に感情があることを再確認する。
「お客様、お客様」
「はい?」
「すいません、お客様で2台使われますと、他のお客様がご使用できませんので…」
「全然人いないからいいじゃないですか」
「あの、あちらのお客様からですね、配膳ロボット同士を会話させるのは、控えていただきたいと」
「…そうですか」
ロボットたちはすーっと帰っていった。
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