スティック・トゥギャザー

行きは手を引かれて、帰りはレジ袋の持ち手にしがみついて、土日はスーパーに買い物に父と買い物に行っていた。まだ小さかったから手を離してはいけないことになっていた。でも、走りたい。
「お父さん」
「うん?」
「ヨーイドン! …ねえ、ヨーイドン! ねえ!」
そう言っても父はのんびり歩いている。

「お父さん!」
「ヨーイドン!」
この、急にスイッチが入って走り出すのが好きだった。今考えると危なくない道を選んで走っていたんだと思う。
手を繋いだまま走るから追い抜けないけれど、少しでも前に出ようと思って一生懸命に走って、だけど父は急に止まってしまう。だから公園に行く方が好きだった。

落ちている棒の端と端を持って走る。長ければ長いほど楽しい。ここなら父も本気で走ってくれる。早すぎて私が転んで棒を離さないから地面を引き摺られて服がボロボロになって母に怒られるのはしょっちゅうだった。一回やばかったのは、鹿のうんこを踏んでしまったことで、しかも父も私も揃ってやった。

水道で靴の裏を一生懸命洗っても洗っても隙間に入り込んで取れない。しかも隙間がどんどん小さくなっていく。それで靴がびしょびしょになって、履いたら底から鹿のうんこが染み出してくるような気がして最悪だったけど、お父さんと手を繋がずに走って帰った。今までで一番早く走った気がする。

stick/棒、くっつく

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