かわりばえのない日々
ある会社員がいる。毎朝電車に乗り朝礼を聞きランチを食べ仕事をし電車で帰り妻と夕食を食べ寝る。「ある日、会社員は思った「同じことの繰り返しに何の意味があるんだろう?」」。完璧な出だしだ。でも、問題は同じことにあるのではなくてちょっとずつ違うことにある。それに彼も作者も気づかない。
家を出るのが少し遅くて一本後の電車になる。電話を回そうとして話しているのが誰かを聞きそびれている。昼休みに行くコンビニで買うお菓子が売り切れている。ぼんやりして自転車に轢かれそうになる。イレギュラーが毎日どこかに潜んでいて、それが繰り返しに彩りを与え、日々を耐え難くする。
「毎日同じことの繰り返しだと考えられる人は誤差を自分の中で処理できるんだよ。それを処理しきれない人が溜め込んで爆発させる。あなたの場合、イレギュラーをことさら大きく言い立てて何かをしない言い訳にしてるじゃない」
「でもこの苦しみは私の苦しみでそれは神聖なものだから」
「じゃあいいんじゃない?」
仕方ない、近似値を切り捨てて毎日を同じにしてしまおう。同じ電車に乗り朝礼をまじめに聞きランチは同じものを食べきちんと仕事をし定時で帰り妻と同じテレビを見る。ちょっとずれても気にしない。何も感じなくていいことの幸せが訪れ…ない。毎日自分は違うし世界も違う。仕方ない、ずれていこう。
alike/同じく
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