「ゆる化け」ブーム

今、たぬきの間で「ゆる化け」がブームになっている。ゆる化けとは、リアルさを追求せず、あえてたぬきのディテールを残すところにたぬきとしての自負やかわいさを見出すムーブメントである。今まで単なる「化け損ない」として見られていたものに新たな光を当てるものとして注目されている。

もちろん、年配の狸たちからは奇異の目で見られたし、リアリスタ(リアルさを追求するタヌキたち)からは厳しく給弾された。リアリスタは、これはタヌキを陥れようとするキツネの罠であり断じて受け入れることはできない、わざわざ人間に見つかりやすくするなんてとんでもない、というのである。

しかし、ゆる化けを支持するたぬきたちは「ゆる化け部」を作り、ゆる化けの追及普及とに努めている。もっとも、その名の通り大事なのはゆるさなので敢えて「ゆる化け」の定義はしない。つまり、どこまで攻めるか、どこを抜くか、というのは個々たぬきに委ねられている。

狸のボディビルコンクールで司会を務めたこともある今津助教授(民俗学)は「ゆる化け」を「狸自身の自己発見に繋がるもの」と評価するが、正確な模倣が軽んじられることのないように釘を刺す必要はあると言う。「動物なら筋肉、物なら構成、それを知ってからあえて、というのが「ゆる化け」の良さではないでしょうか」

tepid/ぬるい

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