夏の夕暮れの埠頭で愛を叫ぶ

夏の夕暮れの埠頭で、彼女を前にして、大きく息を吸い込んで(序奏)「好きだ!」と叫んだ。(第1主題)
彼女は空を見上げた。「ねえ、空の色が変わるのって、虹の色の順番なんだって」(第1主題の展開)
そこに、街の方からあいつがやってきた。「ちょっと待った! 俺だって彼女が好きだ!」(第2主題)

彼女は空から目を離さずに言った。「太陽光の距離が昼間より長いから、青い光は散乱して、赤い光が残るんだよ」(第2主題の展開)
「好きだ!」とまた叫んだ。(第1主題の簡易な再現)
「俺だって好きだ!」とあいつが叫んだ。(第2主題の簡易な再現)
「じゃあ、どうするの」(展開部)

「だから、好きだ!」とまた叫んだ。(第1主題の再現)
「俺だって好きなのに!」とあいつが叫んだ。(第2主題の再現)
「波長が短い赤色が強くなって、最後には消えてしまうんだ」と彼女は言って、くるっと一回りして自転車に乗りその場から去っていった。(終奏)
「好きだったのに…」
「展開が無いから…」

recap/再現、要約



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?