寒い寒いクリスマス

 家の前に西京区の大動脈が通っている。車からバスから自転車からランナーから園児を入れたワゴンからなんでも通るが、車一台分の幅しかないから、すぐに滞ってしまう。家の壁はすぐに擦られるし、家から出ようにも出られないし。石を置こうがコーンを置こうが何をしても全然効き目がない。

 今日も大騒ぎなので出てみたら橇の横にサンタクロースが立って呆然としている。
「空から降りて来たら引っかかっちゃって」
「なんでここ通るんですか」
「いやー、反省反省」
 二人で押してもびくともしない。後ろから来たハイエースに乗っていた貧相な男と若い女が手助けしてくれるがどうにもならない。

「力入れるとバキっていきそうで。橇とかいろいろ高いだろうし」
「飛べないんですか?」
「なるほど! 少し浮かせればいいんだ」
 浮かび上がったところを4人で押したらスポンと抜けた。
「おおおー、ありがとうございました」
「いえいえ、役に立ってよかったです」
「壁がちょっと削れたけれど…」

「すいませんでした。これはお詫びです」
「メダル?」
「メダルですけどこうかなものじゃないのでお気になさらず。ぐわははは」
「は?」
 気づいたらどこかへ行ってしまっていた。それも昔の話で、今は家の上に道路が通るようになったから、幸か不幸かそんなことも無くなった。

aorta/大動脈

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