どれもみんな些細なこと

ある星が消えた。星の中で生き物たちが醜く争いお互いを殺しあった挙句に自分達の住処である星そのものを消し去ってしまったのだった。その星がある宇宙が膨張しきって収縮している途中に、ようやく星からの最後の光が宇宙の果てに届いた。宇宙の外にいるものは「ああ、星が一つ消えた」と言った。

ある人が死んだ。社会の荒波に揉まれ日々の生活のために戦い抜いた挙句に自分で自分の存在を消し去ってしまったのだった。その人がいた部屋から異臭がし始めた時に、ようやく隣の部屋の人が気づいた。管理会社が呼ばれ大家が呼ばれ警察が呼ばれ掃除屋が呼ばた。「ああ、ようやく片付いた」と大家が言った。

ある感情を殺した。人と関わり合う中でひどい傷付け方をしたからその人に対して持っていた感情を消し去ってしまおうとしたのだった。その人が離れていった時にどうしても拭い去れないことがわかった。「時が経てば忘れるから」。でも、感情も傷付けた思い出もこの宇宙のどこかには残ってしまう。

trice/取るに足らない

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