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長男夫婦が家を出た。分析と考察。義両親との同居に不安の方は一読を。

身内事で恥ずかしい話だが、長男夫婦が同居していた両親とケンカ別れして家を出た。居候身分でそばで見ていた経験から、一般化した理由や影響について語ろうと思う。同居を考えていてそれを継続して成功させたい長男夫婦、両親夫婦に見てもらえれば幸いです。



◆親と成人した子(長男夫婦)の同居で問題になる点
根幹:家の存続、維持を願う家信仰。

派性:権力争い、ボス争い。

爆弾:介護、仕送り、両親のお世話問題

家を、家柄を、血統を守る、引き継いでいくという個人ではなく家の繁栄を願う思考がある。家にとってこうする方がよいという選択、縛りで両親と成人した子の間でもめる。また、派生して成人してお金も稼いでいる、結婚して子供もいるのに、自分の意志だけで決められない、人に指図される権力争いの構造もある。最後は、親が達者に動けなくなった時の補助、介助、介護、金銭的な援助などの問題で、トラブルが生じるケースが考えられる。



具体的には以下の通り。これで対立が生じる。

1、子供を作ることへの過干渉、長男を生むことへの過干渉

2、生まれた孫への過干渉

3、家周りの掃除手入れ(庭・側溝掃除等)、

4、家内の掃除手入れ

5、家(オフ)での過ごし方への過干渉

6、町内、組合、○○会への雑用、労働

7、親族集いの雑用、労働(年末年始の集い席、冠婚葬祭等)

8、先祖の墓の掃除手入れ

9、各種金銭的支払いの決定権の制限

10、親の世話、介助、介護、仕送り問題。


すべての根底には、家を守りたいという思想がある。それは妥協・調整できる面もあれば、そうはいかない面もある。親が持つ家信仰の質と強度にもよるだろうし、成人した側の思想・行動様式にもよる。ただ思うのは、家信仰は思想である以上、簡単には変えられない。自覚があれば、まだ救いがあるが、長男・長男の嫁なのだから(跡を継ぐのはお前だ)と、盲目的に押し付けるようだと、いずれ離れるしかないと思う。


3,4,6,7,8は、休日を削られるが、あくまでそれらは労働である。だから、対価(家賃光熱費の負担軽減等)や職場雰囲気(嫁姑や父親息子関係性)がまともであれば、まぁ人より休みが少ない仕事だが、仕方ない程度のものだろう。


一方で、深刻なのは1,2,5,9 10だろう。

1、子供は授かりものなので、なんともしがたないところである。しかし、不妊治療への過干渉や、予定した人生プランよりも男が生まれるまで生めという過干渉は、人格や人生観への対立が必死なので、強い反発や不満が生まれかねない。


2、教育にとって何がいいのか。何を目指すのか。正解も不正解もわからないなかで、勝手な干渉は不快でしかないだろうし。また自らの子であるのに、それを取り上げて家の子とする扱いも、人によっては心底嫌だろう。躾や関わりと、教育方針への口出し等との線引きが重要になる。


5、昼過ぎまで寝ているなんて。惣菜ばかり買ってくる。お米を毎日たかない。出かけては子供と夜遅くに帰ってくる等。普段の食習慣や行動スタイル、長年かけてかたまった自分のやり方を、まぁこれでいいかという方法を、否定されるのは好ましくないだろう。上記の労働とは異なり、普段の行いを、”うちではこうする”という理由だけで改めようとするのは、反感しか持たれない。子供の栄養的に良くないなど、明確な理由と改善案がある事案ならば、また話は別だろうが・・・。


9、車の買い替え、家の修繕、家電製品の購入、光熱費、通信料、外食の頻度、おもちゃの買い与え方等々。項目が多岐にわたり、日常的で頻度が多くなるため、5に加えて9も、問題の根が深く蓄積もしやすいと思う。家信仰両親視点で見れば、家全体の繁栄のためのお金なのだから、皆で協力して”一つの財布””俺”の金銭感覚でやっていこう、それで間違いないという話になる。一方、反対側から見れば、家賃光熱費が浮いている援助分は助かるけど、自分で稼いだお金を自分で好きに使って何が悪いとなる。家計簿の夫婦間口論と同様だ。やれ外食が多いとか、通信費が高すぎるだなんだと。ただ夫婦と異なり、嫁と義両親という力関係だと、夫婦のように対等に、また包み隠さず金銭議論ができるわけもなく、感情的亀裂になりやすい。


10、それはいつ来るかわからない爆弾である。義両親の介助、介護等のお世話問題。そこには時間費用の負担、心理的負担、肉体的負担がある。極論を言えば、お金次第でもある。お金があればすべての負担を誰かに丸投げできる。しかし、お金がなければないだけ負担を自分で担う必要があり、それが限界を超えれば、いずれ破綻する。世話問題が表面化するのは、結婚後20年以上は通常先なのだから、結婚同居時にここまで考えることは難しいし、結婚同居生活の間に培われる関係性もあるだろうから、なおさら難しく何とも言えない。



上述の1~10のトラブルを逆側から見れば、それがそのまま両親と同居する際のポイントになる。端的に言えば、以下の通り。

長男の実家に住むことで、休日をつぶされる余計な仕事手間が増える。気を遣う仕事が増えることを覚悟する。

跡継ぎや男を生めなどは絶対に干渉させない。また、生まれた子供の教育観には口を出させない。援助してもらう分は感謝するが、教育方針やアドバイスを”押し付けない”でもらう。

価値観生活スタイルは変えがたいので、ある程度は許容してもらう。我慢ならない時だけ話し合いの場を設ける。特に金銭的価値観での違いは、家のお金(1つの財布)のようにみる家督には、許せないように思えるので、事前に十分に意識のすり合わせをしておかないとトラブルになりやすい。


これらの覚悟と、事前に両親や長男夫婦のそれぞれの夫婦同士で、意識のすり合わせが必要になる。これが、全部俺のやり方にあわせろというタイプの両親ならば、確実に同居はしんどいものになる。この辺りは世代間意識格差でもある。家に嫁ぐ。郷に入りては郷に従え。嫁は長男実家にあわせるものだという意識の旧世代と、自由や個を尊重する、価値観は多様だという新世代では、そもそも合意しがたい部分が多いかもしれない。




話を次に移す。結局様々な理由から、家を出るとなると、どういう影響や支障がでるのだろうか。


1、経済的援助、支援の喪失と補填。両親の資産。
まず思いつくのは金の話である。というかそもそも両親に資産がない場合には、上述のような自由主義で個人主義的な、親と同居が嫌なら、好きに家を出ればいいという話を押し通すことができる。両親との人情・感情的な問題は起きケンカ別れになるかもしれないが、尾を引き頭を常に抱えるようなトラブルや後悔は残らないからである。例えば、家を離れ都会にでて完全に自立している息子には、全く悩みようがない話だと容易に想像できる。そもそもすでに関係性が縁が頼る理由がないのだから。


・これまで子供に払った金額の総額。

・大学などの、義務教育以上の教育費や一人暮らし生活費

・社会人になり同居中の生活費や援助金(車購入補助等)の類。

・結婚後の生活費や援助金の類、孫への援助費。

・結婚や同居を理由にリフォームや新築した家の建築費等

・予定していた介護をしてくれないなら、人に頼む介護にかかる費用

・生前贈与として譲り受けた土地や建物、金融資産等

親の主義主張と、老後資金のめどがどれだけあるのか。で上記のどこまでを親が請求してくるのかわからないが、家を出て縁をきるやそれに近いことをする気ならば、金のケリをつけることを求められる。特に厄介な場合は、生活圏や仕事場が実家(同居場所)からでも通える場合である。実家からでも通えるのに、家をでて別居するということは、利便性や必要性、効率性問題ではなく、ただただ人間関係の問題で別居すると明言することに他ならないからだ、感情的亀裂を強くしてしまう。


そして、当然もらえるだろう長男としての遺産の恩恵を損なうことになる。そのそろばん勘定がある。しかし、仕事で大成功を収めて、親以上の収入や地位がある場合には、親を頼りにしなくてすむのだから、簡単に親を切り捨てる側にまわることができる。これまでの教育生活費の総額も容易に払うことができるのかもしれない。もっと収入がある場合には、親を押し込む介護施設の面倒までみて、費用を負担して、親の面倒をみたということもできるのだ。



2、世間体
出戻り、離婚、バツイチ、別居。以前よりも婚姻・同居によるトラブルの全体数は増加しており、そこまでの少数派ではなくなってきたと思う。なので、世間体という外からの圧も緩和されている。そして、家を出たいと心から思っているのなら、世間体という弱い理由で、出るのをやめることはないだろう。


3、介護問題
気に入らない両親の、さらに老後の面倒な介護もしなければいけないという苦行。それは家を出るのを後押しする理由になる。ただし、道徳心のブレーキが働き、自らの両親を見捨てることに罪悪感が生じるかもしれない。とはいえ、少し悪いこととと思いつつも、大きな理由のためにはそれはいずれ無視する気持ちになるだろう。例えば、遅刻しそうだから急いで、信号無視をするように。また、現状介護問題を抱えていないのであれば、直面していないということで、見捨てる問題から目をつむりやすいだろう。


4、子育て支援 孫の世話。
子供の送り迎えや残業時の世話など、共働き夫婦の子供の世話を両親が補助してくれている場合。そこから得られる恩恵は非常に大きいだろう。家を出るために、子供の世話を自分でする必要があるから、夫か妻が仕事を辞めることになる。片方の収入がなくなっても問題はないのか。子供の世話でかかる費用はどれぐらいか。となるだろう。


5、遺産相続トラブル。
親の資産量がトラブルを大きくする。つまり、法定相続人の数だけ、そのかれらが声をあげてトラブルになる可能性がある。ずっと親と同居して、家を守り、親を介護し、立派に生きた長男に対して、論理的、道徳的な批判はないだろうが、その長男が親とケンカ別れした場合に、もらえなかったはずのものがもらえるかもしれないとむらがってくる人は、その金銭的困窮度合いに応じて、一定数いるだろう。



まとめ
・地方就職で実家から通勤している。

・デフレ、経済規模の縮小→将来への先行き不安

・親が資産を保有していて、利用・支援関係にある。

・世話が必要な未就学児がいる。

そこそこサイズの地方都市中心部で親と同居している人は、これら条件に合致していて、長男が家を出るという選択が大きな厄介事に発展しやすい。実家から通える職場であれば、家を出るはっきりとした理由(建前)を、作ることができない。人口縮小と経済規模縮小で将来への金銭的不安がある。できるだけ支出を抑えたく、両親からの援助に助けられる金銭的支援関係になりやすい。そして、両親の家や土地があれば、将来の大きな買い物の負担が減るのだから、親の資産をあてにしてしまう心理もある。一方で、首都圏などの都市部では、長男が家を出ることは、大きな問題にはなりにくいだろう。首都圏で両親と同居できる家を持ちつつ、その通勤圏内で仕事をしているというケースは稀だと思う。




終わりに

結局はいびつな力関係がある同居、いびつな協力関係がある同居のトラブルが時を経て表面化しただけだと思う。なので事前にいびつにならないように1~10の項目についてあらかじめ下調べや話し合いを設けて、回避するようにした方がよい。


また、トラブルとまではいかなくても、過渡期の苦労もある。組織・集団のボス争いというか・・・。面倒を見てほしい、口を出したい、権力にしがみつきたい側は、遺産相続や生前贈与をぎりぎりまで遅らせたり、援助をちらつかせる。他方で、息子夫婦は、高齢化で思考が鈍り、判断決断も不鮮明不透明な高齢の親から早く引き継ぎたいと思う。そしてもう口を出されずに好き勝手やりたいと思うのである。


一番可哀想なのは、お嫁さんの立場だろう。1,2,5,9は本当に死活問題になりうるかもしれない。世代的に、便利に楽になってきた状態を当たり前にしてきているのだから、親世代より楽な方(時短、簡単、手軽、簡素)に流れているだろうから、親世代の感覚とはずれていく。楽な方になったとも感じていないだろう。男側と異なり、義両親とざっくばらんにケンカもできないし、これまで生活を共にしたことがないのだから、義両親の苛立ちポイントがどこにあるのかもどれだけずれているのかもわからないのだし。


さて、人間の進化はとまる。というか、もうこれで十分だろと思った人は、そのやり方スタイルに満足してそれを使い倒す。若い人たちは、そこからスタートするのだから、当然もうこれで十分のゴールラインは、前世代よりも伸びる。当然例外はあろうだろうけれど。さて、そうなると世代間ギャップともいえる家信仰特に5,9のやり方の対立は、親と成人した子(息子夫婦)の間で避けられないのかもしれない。


いや、互いが心を開いて冷静に思いのたけを話し合えば、それで妥協調整の答えは見つかると思う。また、自分のやり方が絶対だと親世代が傲慢にならなければよいだけの話でもある。立場が強い上の方こそ、歩み寄るべき話だと思うのだが・・・。





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