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ドライブインなみまシリーズ

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いらっしゃいませ! この『ドライブインなみま』は、オムニバス形式の小説でストーリー展開しています。お読みいただければ、とても嬉しく思います。
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#オムニバス

ドライブインなみま|小説 プリン編

だいたい甘くてやわらかいものは、すぐに口の中から溶けてなくなるから信用ならない。アイスク…

ドライブインなみま|小説 うどん編

「はい!息を吸ってえ、吐いてえ、吸ってえ、はい!止めて息んでっ!」 助産師の伊藤さんに言…

ドライブインなみま|小説 ナポリタン編

言葉が螺旋を描きながら私のてのひらへ舞い降りてきた。温かい。触れた瞬間にそう思った。  …

ドライブインなみま|小説 中華そば編

魚の鱗が手の甲と腕にあった。それは透明な瘡蓋のようにピタリと皮膚へ貼り付いている。 「手…

ドライブインなみま|小説 オムライス編

──あーあ、恋に落ちた。 瞬間的にそう思った。幾分高熱に魘された時のように身体が浮遊して…

ドライブインなみま|小説 サンドイッチ編

「私の名前は林 雨桐(リン・ユートン)と言います。」 と、茶色のテーブルにある自分が書い…

ドライブインなみま|小説 ミックスジュース編

自分の抜け殻を見たような気がした。空蝉の硬質な殻の内側は、がらんどうになっているような。 透明な管に繋がれた私は四角い窓の外を見ている。青々と茂る葉を揺らして夏が網戸の網目を滑り抜けて私の頬や額や髪と接触した刹那、何が爆ぜる匂いがした。それはマッチを擦った時のような化合物の刺激的な匂いだった。私の鼻腔を突き抜け脳みそへ到達すると、それがトリガーとなり、着火された瞬間のオレンジ色の炎がぶわっと上がるときの小さな興奮が胸の奥を攫う。何度かスンスンと鼻を鳴らして、再度、その匂いと