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インド映画ネタバレ感想・大地に根差したダンス ⚫︎SOORARAI POTTRU ただ空高く舞え

2024年7月19日フォーラム福島で、ただ空高く舞えを観た。終わって夫の第1声は「誰も死ななかったね」同感である。病で死ぬ人はいる。ナタや鎌で殺し合うのはない。実話ベースだからというのもあるのだろうが、その点だけでも安心して観られる。

あらすじは、公式サイトの通り↓

なのだけど、私がこの映画を観て最も強く感じたのは「踊りたい!」だった。
お陰で昨日も福島市でこの映画を観た後、一部高速を使って郡山市に戻り、大好きな先生のズンバに参加することができた。

昨年2月にRRRに出会って以来、インド映画のダンスに衝撃を受けている。超絶技巧すぎて、私はどう転んでもバックダンサーの方々の足元にも及ばないのだが、それでも自分なりに身体を動かしたいという原動力をいただいてきた。

今まで観てきたインド映画では、(私が観た範囲なので例外はあると思う)ダンスが出てくる場合、きらびやかなディスコ、華やかな舞台セット、珍しい雪山や流氷、お花畑をバックにしたダンスが多かった。
主演もバックダンサーも主にこちら(観客側)を向いている。2人のシーンは甘い表情や際どいジェスチャー、恋の駆け引きを連想していた。
つまり、主演のスターを引き立てる演出で、それはそれで好きだ。(どの曲もリズムや楽器の協奏が好きだし)

ところが、ただ空高く舞えでは、土や大地や家族、同胞たちと分かち難く結びついたダンスだ。踊る主人公はこちらを向いているというより、同胞たちと響き合い、泥臭い。気取りやおしゃれ、クールや洗練とは対極のダンスに度肝を抜かれる。
主演スターの凄さも伝わるが、それ以上にリアルな大地や土が、こちらに迫ってくる印象だった。

冒頭このダンスで主人公が、葬列で「死んでも額に1ルピーを載せられるだけ」というような字幕の歌で踊る。そしてこの1ルピーが、人々を1ルピーで飛行機に乗せたいという執念と呼応している。

執念。
これだけ踏まれても行く手を阻まれても、夢に邁進する主人公たち創業者3人の間には、言い合いもある。愛する妻とさえも。だからこそ「雨降って地固まる」で、低価格の航空会社を実現させる執念には、頭が下がる。

このダンス。結婚前の2人がお互いを想う想像上の場面なのだが、まるで真剣勝負の雄ライオンと雌ライオンの戦いのようだ。甘い恋の駆け引きではない。大地に根差した「今・ここ」で目の前のことに取り組んでいる、2人の獰猛な仕草や表情に見惚れる。

私はインド映画から「生きろ」というメッセージをもらっている。この「ただ空高く舞え」からも、とりわけ強くいただいた。
ヘッダーの画像のパンフの表紙は主人公の横顔だ。ヨーロッパの中世の肖像画で時々見かける、この真横からのアングル。スーリヤさんの美しい顔の輪郭。瞳はほのかに微笑んで、空を飛ぶことを希求している。一眼でこの映画のテーマを表す秀逸な横顔だ。

※この映画、ヤマドンガのヤマ様を演じたモーハン・バブーさんが上官だった。
そして、音楽は響け情熱のムリダンガムの主人公ピーターを演じたG・V・プラカーシュ・クマールさん。
さらに響け情熱のムリダンガムのヒロイン、サラ役を演じたアパルナー・バーラムラリさんが、この映画のヒロイン、ボンミ。全然分かりませんでした。

⚫︎感想まとめ
置かれた場所で泥臭く生きると同時に、想像上の空を自在に飛ぶ理想を、私も自分なりに持ち続けたい。

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