鏡開き

正月に神(年神)や仏に供えた鏡餅を下げ、雑煮や汁粉に入れて食べる行事を鏡開きと言います。

武家では、鎧などの具足に供えた具足餅を下げて雑煮にして食しまして、これを「刃柄(はつか)」を祝うと言ったそうです。この武家社会の風習が一般化したものが今の「鏡開き」です。また、女性が鏡台に供えた鏡餅を開く事を「初顔」を祝うといい、二十日(はつか)にかける縁語ともしていたそうです。

武家中心の時代、刃物で切るのは切腹を連想させるので、手や木鎚で割り物を分けること多かったそうです。そして、言葉の響きも「切る」「割る」という言葉を避けて「開く」という縁起の良い言葉を選びました。

ですから「鏡開き」と呼ばれています。縁起をかいでいるのです。


「忌み詞(いみことば)」はごぞんじですか?


もともと、宗教的な理由から、また縁起をかついで、使うのを避ける言葉を「忌み詞」といいます。それを口にすることを良しとしない言葉。あるいは、それを言い換えた言葉のことです。

神に仕える斎宮は穢れを避けまた仏教も禁忌とするため、それらに関連する言葉も禁じられました。 延喜式(えんぎしき)の5巻(斎宮)5条(忌詞)に次のとおり記されています。

凡忌詞、内七言、仏称中子、経称染紙、塔称阿良良伎、寺称瓦葺、僧称髪長、尼称女髪長、斎称片膳。 外七言、死称奈保留、病称夜須美、哭称塩垂、血称阿世、打称撫、宍称菌、墓称壌。 又別忌詞、堂称香燃、優婆塞称角筈。

(訳) 忌み詞は、「内七言」として、「仏」は「なかご(中子)」、「経」は「そめがみ(染紙)」、「塔」は「あららぎ」、「寺」は「かはらぶき(瓦葺)」、「僧」は「かみなが(髪長)」、「尼」は「めかみなが(女髪長)」、「斎(とき; 仏僧の食事の意)」は「かたじき(片膳)」と呼ぶ。 「外七言」として、「死ぬ」ことは「なほる(治る)」、「病」は「やすみ」、「泣く」ことは「しほたる(塩垂れる)」、「血」は「あせ(汗)」、「打つ」ことは「なづ(撫でる)」、「肉」は「くさひら(菌)」、「墓」は「つちくれ(壌)」と呼ぶ。 ほかにも、「堂」は「こりたき(香燃)」、「優婆塞(うばそく; 仏教で在家信者のこと)」は「つのはず(角筈)」と呼ぶ。

内七言は仏教用語、外七言は穢れの言葉で、次は縁起をかついで、使うのを避ける言葉です。


眼代風に分かりやすい一般礼をあげます。

結婚式・・・離婚を連想させる言葉の使用を避ける。
例: 別れる、切る、離れる、戻る、帰る、終わる、破れる、割れる、重ねる、去る、流れる、壊れる

受験・・・不合格を連想させる言葉の使用を避ける。
例: 落ちる、滑る、転ぶ、散る、重ねる

妊娠・出産・・・流産や死産を連想させる言葉の使用を避ける。
例: 流れる、消える、降りる、滅びる、破れる、枯れる、死、四、苦、九

新築・新居、開店・開業・・・火事や倒産を連想させる言葉の使用を避ける。
例: 焼ける、燃える、崩れる、傾く、流れる、折れる、閉じる、失う、滅びる、火、灰

病気・お見舞い・・・死を連想させる言葉の使用を避ける。
例: 重ねる、たびたび、再び


 性的な言葉や不潔な言葉を避けることもある。これらは言い換え語も遠からず性的な、あるいは不潔なイメージを持つこととなり、次々と新しい言い換え語が生まれることも多々あります。

語呂合わせを避けたもの
葦(あし) アシが「悪し」に通じることから「葭」(よし)に。
おから(卯の花、きらず、雪花菜) 「空ら」に通じることから。
おしまい(おひらき)
梨(有りの実) 梨が「無し」に通じることから。
亀梨(亀有) 昔は「亀梨」という地名だった。「梨」が「無し」に通じるため、江戸時代初期ごろから変更。
猿(得手、エテ公のエテのこと)猿が「去る」に通じることから。
九・く 「苦しむ」に通じることから。特に病室の番号および病院の待ち番号では使用されない。久に替えることも。
四・し(よん) 死に通じることから、訓読みの「よつ」から新しい読みが作り出された。アパート・マンション・ホテル・病室の番号および病院の待ち番号などでは使用されないことがあります。特に病室の番号および病院の待ち番号では絶対と言って良いほど使用されません。しかし現在、アパート・マンション・ホテルではあまり気にされず使用されることが多い。。。
切り身、刺身(お造り) 「切る(切腹する)」に通じることから。
醤油(むらさき) 醤油の「し」が「死」に通じることから。
塩(浪の花) 塩の「し」が「死」に通じることから。
シクラメン 「シク」の部分が「死苦」に通じることから見舞いで持ち込むには禁忌とされている。
シネマ(キネマ) シネが「死ね」に通じることから。
シネラリア(サイネリア) シネマ同様、「死ね」に通じることから、シクラメンと共に禁忌とされる。
する(あたる) スルが「摩る(ギャンブルに負ける)」に通じることから。
すりこぎ(あたりこぎ、あたりぼう)
すり鉢(あたり鉢)
スリッパ(あたリッパ) 寄席芸人などが使う。
スルメ(アタリメ)
フグ(ふく) 「不具」(=身体障害)に通じることから。下関市周辺で用いられる。
プレステ(プレイステーション) 「捨て」に通じることから。ソニー関係者の間では「プレイステーション」か「PS」と言い換えられたとか。
豆腐(豆富)腐るという言葉を避けたことから。
鉄(鐡)「金を失う」という意味に通じることから。鉄道会社や製鉄会社では社名に旧字体の「鐡」を用いることがある(「鐡」は「金の王なる哉(かな)」とも読めることもあります)。また旁を「失」ではなく「矢」に変えた字(鉃)にすることもあります。
利休箸は、利益を休むから利益久しく利久箸と。。。

システムの関係で仕方なく4と9が使われているので、いつか忌み詞も忘れられいくかも知れませんね。。。

縁起が悪いとかえられていくという話でした。


鏡開きに戻りまして。


鏡は円満を、開くは末広がりを意味します。また、鏡餅を食すことを「歯固め」という。これは、硬いものを食べ、歯を丈夫にして、年神様に長寿を祈るためであります。

元々は松の内が終わる小正月(1月15日 (旧暦))後の1月20日 (旧暦)に行われていましたが、徳川家光が亡くなったのが慶安4年(1651年)4月20日 (旧暦)であったため、関東では1月20日を忌日として避け、後に1月11日 (旧暦)とされたそうです。

現在では、松の内が1月7日の地方では1月11日、松の内が1月15日の地方では1月20日(二十日正月)、京都では1月4日に行なわれています。

これとは別に、祝宴などで菰(こも)を巻き付けた酒樽(菰樽という)の蓋を木槌で割って開封することを鏡開きと呼ぶ場合があります。これは正しくは鏡抜きといいますが、今般は鏡開きで通ってますね。



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