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茶の本

今日では外国の人々が茶道を習うことは珍しいことではなくなってきています。茶道を習うことで華道・香道・書道といった日本文化を学べ、季節・風習・伝統行事から食事作法や生活感まで知ることが出来ますので、茶道をたしなむのです。そのことに、最初に目を付けた外国人は桃山時代の宣教師達でありました。キリスト教布教の過程で日本人との交流目的と日本人を理解するのに、茶道が重要であると考えたのです。
それから350年、海外で日本の茶道に興味をもつ人はあまりいませんでしたが、1906年、茶道が日本文化の代表的な芸術であることに強い興味を持つ切っ掛けとなる「The Book of Tea」がニューヨークで出版されます。
「The Book of Tea」は美術家・思想家である岡倉天心がボストン美術館の東洋部長就任中に執筆しました。日本を野蛮な国と見ている欧米人に対して、茶道を通して日本文化・文明・思想・歴史などを発信したのです。特に岡倉天心が伝えたかったことは、茶道が日本人の日常生活・文化・芸術のあらゆる分野に影響を与え、その中には哲学が流れ、審美的な宗教であり、道教と禅の思想を持っているということであります。
アメリカ・イギリスで大きな反響を及ぼしベストセラーとなり出版を重ね、フランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語など様々な言語で翻訳され世界各地で出版されています。世界中の人々が茶道を通して日本文化を深く理解しているのです。
1922年、「The Book of Tea」は和訳されます。日本で日本語訳の「茶の本」が出版となります。西洋人に対して発信した天心の思想が日本人にも発信されます。「茶の本」から見る天心の思想は茶道をたしなむ人であれば共感できます。そして、100年経つ今も尚「茶の本」は書店に並んでいます。100年前に日本の文化・芸術・哲学・日常生活を知らない西洋人に伝えようとしたことが、日本の文化・芸術・哲学・日常生活を無くした日本人に振り返らせてくれるに違いありません。


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