ふすまの開け閉め
茶道だけに関わらず、日本文化の作法は「ふすま」の開け閉めから入ります。「ふすま」を開けてはいる仕草が第一印象となるのですからとても大切なことです。
ふすまの開け方
・ 襖の正面に両手を膝の上に置き座り、引き手に近い方の手でふすまを五センチほど開けます。
・ その手を下から約八寸(約二十四・五センチ)のところの縁をもち中心まで開けます。このとき、襖紙には指をかけないように心がけます。
・ つぎに反対の手で同じ位置の縁をもち開けます。このとき、襖を全て開けてしまわずに、閉めるための手がかりを五センチほど残しておきます。
ふすまの閉め方
・ 閉めるための手がかりを近い方の手で下から約八寸の縁をもち中心まで閉めます。
・ 反対の手で同じ位置の縁をもち五センチほど残して閉めます。
・ その手で引き手にかけ残りを閉めます。
日本家屋の中で生活面・美術面として欠かせないものは「ふすま」です。平安時代、貴族階級の住宅は床と屋根だけの寝殿造でした。そこに風よけ、部屋の仕切りとしてはめ込み式障子・立障子として「ふすま」が生まれました。鎌倉時代に入り寝殿造から書院造にかわり、天井・建具で部屋を一つ一つに区切り、それぞれの部屋が様々な役割を持つようになります。それを仕切る「ふすま」は現在の姿に近い襖障子・引き違いに扱う遣り戸(やりと)障子が使われるようになります。江戸時代に入り書院造は完成され、一般庶民の住宅にも襖障子・明かり障子が取り入れられるようになります。
「ふすま」は部屋の仕切りとしてだけでなく美術品としても生かされます。いわば部屋のインテリアとなるのです。平安時代には金箔を蒔き「紫式部日記」「源氏物語」などの絵巻図や「平家納経」「久能寺経」などの装飾経を描き飾ります。また、この頃には中国より唐紙という木版刷りの様々な模様のある紙が輸入され、これも美術品として襖紙に使われます。鎌倉時代には禅僧の影響があり漢画の山水画・人物画が流行となります。また、「引き手」も材質、姿、形と様々なものがあり美的な面を引き出しているのです。
茶道におきまして「ふすま」を開ける心得として重要なことは、ただ開けるという所作をしてはいけません。「ふすま」は美術品であり茶道具の一つでもあります。一枚のふすまにも傷が付かぬように心し、その歴史を味わうことが大切です。さらに大切なことは、ふすまの前に座った時から、ふすまの向こうの相手に心を合わせなくてはなりません。利休道歌にはこうあります。「右の手を扱ふ時はわが心左の方にあるとしるべし」右手でふすまの引き手を開けるとき、左手が遊んでいてはいけません。そこにも心がなくてはならないのです。それだけではなく、指先から体全体に心を入れ、たとえ相手から見えないふすまの向こうでも気を許してはいけないのです。茶道は一つの所作を身につけることにより、多くの心が身に付くのです。
コンフォルト2003.4
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