いしころ
どうも「店員から見えない」という特徴が自分にあるようだと気がついたのはずいぶん昔で、最近それを人に理解してもらえることがあった(ちなみに若き頃は、店員から怒られるという特徴も兼ね備えていた。私からみたら理不尽だが、きっとなにかの理由はあったのだろう)
キャッシュレスに対応し、小さな財布を買おうと思っていた。
ハイブランドがいい、もし使いにくくてもかえってキャッシュレス化が進む。
伊勢丹の某Sーヌに見に行ったとき、お店をさりげなくうろついてみたのだが、店員さんが次々と自分の後から入店して来るお客様に声をかけることに気がつき「やはり今日は見えていなかったか」と自らガラスの引き出しを開けてお財布を手に取ったら飛んできて対応してくれた。こんにちは!お財布を見に来ましたよ!
この話を「また言ってる、ははは」と聞き流す夫を連れて翌週、同じく伊勢丹の某ハイブランドのコーナー、お財布が並ぶガラスケースの前に立った。
立ち位置はこんな感じだった。
店員さんAに向かって「すみません」と言うも気がつかれずだったので、
店員さんBに向かって「すみません」と言ってみたが反応はなかった。
私は両手をひろげて手をひらひらしMCハマー風に左右に移動しながら「すみませーーーーん」と言った。
無事接客してもらい「やっぱわたしGUCCIが好きだな。GUCCI行こ。」と思いお店をあとにしたら夫が
「らに子の動き、バスケのゴール前を見てるようだった。あといま、やっと分かった。」
と言った。
見えてない理由さ、その「石ころぼう」だよ。
ドラえもんの道具に、「石ころぼうし」というものがあり、かぶると人から見えなくなるのだという。それだと夫は真顔で言った。
そうかもしれない。この帽子をかぶりすぎているから、かぶってないときも私は薄くなってるのかもしれない。じゃなきゃ複数のインストラクターがフロアを歩き回り、マシンの使い方を教えてくれる「セミパーソナルトレーニング」をうたっているジムで、30分誰も指導しに来てくれなかった理由が見つからない。 いま考えてもおぱんちゅうさぎ的30分だった。他の人たち、めっちゃ背中支えてもらったり親指立てて褒められたりしてた。
気を取り直し、気合いを入れ直し、青山のGUCCIにノー帽子で行った。河村さんという店員さんがにこやかにお財布を見せて説明してくれ、せっかく来てくださったのだからとバッグもたくさん持たせてくれた。少し小銭が取りだしにくいお財布を買った私に、もし必要ならとおすすめのコインケース(イルビゾンテ)も教えてくれた。楽しい時間だった。 大切に使おうと思った。
家で私はいしころパイセンと呼ばれ始めた。たった2回行った店で「毎度どうも!」と言われるような夫から見たら、そりゃ不思議だろうよ。