2019年のスタンダード。

あとになって思ったのは、広島で悔しそうにその活躍を見ていた選手がいるであろうこと。
しかし、その姿を見て彼がどれだけの思案をしていたのかに気づいて欲しいとも思うのです。

新神戸に着いたら必ず声をかけようと決めていました。
神戸で無我夢中にチャンスをものにするためと渾身の力をふりしぼり走り回った皆川くん。

「めっちゃ、走りましたよ…あとはゴールだけっすね。」と、試合後の清々しい疲れを纏わせたミナくんは、いつもなら謙虚に「まだまだです」というのに今日はやってやったぞ、という気持ちが見え隠れしました。それがまた、嬉しかった。

2014年は若手がたくさん入った年で、しかも、彼らはみんな個性派揃い。
強化部長氏に言わせると「何の心配も無いのはタクマくらい」という程の強者ぞろいでした。
しかし、時は広島最強時代。
若手が少し頑張ったところですきもなく、たまに来るチャンスではなかなか結果を出すこともできません。
そして、出場機会を求めての熊本レンタル。
J2で試合に出た彼は熊本の降格と共に広島へ帰ってきました。

そこからはまた、過酷なポジション争いです。
この週末の紅白戦には、壮也くんとふたり蚊帳の外でした。
それでも、挫けていない、いや、挫けていてもそれは見せないのがプロなのです。

同じように夢を抱いてJ1に来た渡大生。
彼もまた、柴崎さんの離脱でチャンスをつかみます。
彼ももう後戻りはできません。
トップ下は彼の主戦場ではなく、本来なら野獣のごとくゴールだけを狙っていたいはず。
それでも、やるべき事はやるのがプロ。
気持ちも切らさない、チャンス待つその強さ。

しかし、この2人が活躍できた背景には、神戸のスーパースター達ががかかわってきていると思いました。
きっとまさかまさかだったのかもしれません。
バイタルに追い込んで左右に揺さぶりボールを持たせてさらに追い込む。
彼らも前に行きたいのになかなかいかせてもらえない。
まさか、こんな無名な選手ばかりのチームが、どうして首位にいるのか理解できないチームに。
考え始めると体は動かなるなるもので、直感的に守備と攻撃を入れ替え動く広島についていけなくなっているのが見えました。

少しずつ攻め入るサンフレッチェ。
マンマークとはいえ、以前と違い相手につききる距離ではなくなりました。
去年、マンマークディフェンスを取り入れた夏以降、成績は急降下。
その原因は相手との距離間を詰めすぎたことでその裏を取られてしまっていたことでした。
今年のマンマーク、序盤は去年と同じように裏を取られ、守備に回りと、中盤がごった返していましたが、勝てるようになってからは、適度な距離とプレスの強度をコントロールするようになりました。

スーパースターとサイドの繋ぎを塞がれた神戸はイニエスタだけが孤軍奮闘する形になってきました。
そうなると、いくら世界に名だたるヒーローも立ち行かなくなります。
「スズメバチに対抗するミツバチ」と、表現した人もいました。

そうして守備に穴を開けてしまった神戸は、貪欲にチャンスを欲し続けた2人のFWの前に屈することになったのです。

前半の出来は良くなかった、という評価でしたが、前半のあの速攻での失点がなければ1点で分けていたかもしれません。
明らかに気が抜けていた、自分たちの技術が追いついていないと下を向いた瞬間をヒーローは見逃さなかったのです。
技術がおいつていないのは初めから分かっていたこと。
それを上手くやろうだなんて考えていたからああいう失点をするのだ、と、いう奢りを突きつけられたのです。
「彼らは決して上手いわけじゃない」
ハッキリ言ってシーズン当初は、J2並の戦力でやれるのか?と思ったのです。
でも、技術は追いつかなくても頭を使うことはできるのです。
考えることなら今からだってできるのです。
その、頭脳とチームワークの勝利であると思うのです。

後半に入り、しっかり切り替え、決して取りに行こうと焦らず、自分たちのチームのストロングが生きるまで待ち続けたサンフレッチェ。
2019年のスタンダードは、ここから始まるのかもしれません。

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