【デキる医師に成長するための秘訣】

これは、自分の元上司からの教えです。その上司は、臨床・教育・研究に熱心で、今の自分の医師像に大きな影響を与えてくれた上司の一人です。医学以外の様々なことに造詣が深く、それらをアウトプットして伝えることに非常に長けていました。その先生が、ローテートしてくる研修医によく質問していました。本来関西弁なのですが、再現できず済みません。

「できる医者になるために大切なことは何だと思う?」


たくさん参考書や論文を読むことでしょうか。それともたくさんの患者を診て経験値を増やすことでしょうか。

経験値は大切ですが、いくら経験数を重ねても「デキる」医師になれるわけではありません。

その先生は言いました。

「いいか。しっかりとした型を身につけるんだ」

ゴルフに例えて話をしていました。いくら力をつけても、何回もゴルフボールを打つ練習をしても、「型」がしっかりしていないと遠くまで飛ばせない。決して上達できない。しっかりとした型で、繰り返し練習することで、玉をうまくまっすぐ飛ばすことができるようになる。

診療も同じで、どんなに患者数をこなしても「診療の型」がしっかりしていないといつまでも診療が上達しない。挙げるべき鑑別、収集すべき病歴・身体所見にいつも漏れがでて的が外れ、診療スピードも精度も上がらずに指導医から指摘を受け続けて一向に成長が見られない。まず型を身につけろ。そうすれば必ずデキるようになる。

と、話をしてくれました。

なぜ毎回、ABCを評価させるか、primary surveyとsecondary surveyを意識して分けさせるのか、外傷患者はJATECに則って診療させるのか、ショック患者にRUSHをさせるのか。すべては型を身につけてほしいからです。

これは初期研修医のときに身につけておかないと、学年があがれば上がるほど教えてくれる人はいなくなります。この型をしっかり身につけておかないと、「形無し」な医師になります。

患者ごとにオリジナリティ溢れる病歴聴取や身体所見をとってくるよりも、面白みのない、毎回同じようなプレゼンテーションを淡々としてくる研修医の方が医学的な信頼度は高いです。ERではそんなにドラマティックなことは滅多に起こりません。スタンダードな診療を、きちんとこなしていくことで型が身についていきます。そうすることで、型から外れてくる稀な患者に気づけるようになってきます。

実はこの型の話をしてくれた上司も、かつて自分の上司に言われたことだと言っていました。自分も後輩たちに伝え続けていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?