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いやー怖い夢をみちまった

もっとやさしくします


いぬに、肉をあげていた。

いぬは、食用犬。毛が生えてなく、つるりとした外面をしていた。
骨は柔らかく、歯も、皮も、なにもかも、ハムのように柔らかく。まさに、食べられるためだけにあるいぬ、だった。

肉はいぬのエサ。
拳サイズのそれを、プラスチックのタライに入れる。肉に惹かれてタライに収まり味わい食べるいぬに、
そっとナイフをたてる。

やさしく、痛みを感じさせず、小さな傷絆を少しづついれ、悟られないよう、刻んでいく。

肉を食べるいぬは、初め、力強く食らいついていた。が、少しづつ少しづつ、勢いはそがれていった。

やがて、噛むことをやめる。

ぼくは、この生き物を、食べ物として飼ってきた。子犬のこいつを一年育ててきた。食に適した肉と成ったきょう、食べるため、破片にするため、ナイフをいれていく。

ぐっと握るナイフを深くしたとき、
いぬは、命を手放した。
彼はそのとき、その終端のとき、
ぼくの目をみた。

食べるの?

そう聞かれた気がした。

思えばぼくは、こいつを愛していだだろうか。散歩は楽しんでいだだろうか。夜、ベッドの上に乗ってきたとき、やさしく撫でてあげただろうか。

どうやって殺そうか。そればかりを潜めていたような気がする。

愛を与えてもらえなかったこの子。この一年は、良い一年だったのだろうか。

いぬは、散った。刻んだ絆のとおり、バラバラな肉片となって、タライの端から端を埋め尽くした。

最後。ポロリの転がった目玉は、ぼくをどがめていた。

いぬは、ほかに三匹いた。






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