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第7回 村上牛乳店 村上昌基さん

 こんにちは!北区盛り上げ隊です!
 今後しばらくの期間は北区の商店街を中心とした取材活動になります。今回は新町商店街の村上牛乳店さんに取材を行い、商店街に対する思いなどをお伺いしました!

村上牛乳店について

まずは村上牛乳店について教えてください!

 村上牛乳店は有限会社になってから私が3代目で、牛乳店としては戦前からあり、戦後ぐらいに新町商店街にやってきました。まだ新町商店街がなかった時ですね。昔はスーパーがなかったので、近所の人たちに牛乳を宅配するというのが当たり前で、それが現在も脈々と受け継がれています。

1日の流れなどを教えていただけますか?

 早朝3時半ごろから店を開けて、アルバイトの人が積み込み・配達をします。朝の7時ごろに宅配を終えて、朝食をとってメーカーから引き取りをします。午後に翌日の用意、エリアごとに商品を分けます。だいたい商品数が50、60種類ぐらいあるのでそれを分けます。夕方にお風呂屋さんや自動販売機を回って終わりという流れです。

配達するエリアはどの辺りですか?

 だいたい丸太町より北側です。北は岩倉あたり、西は仁和寺あたり、東は修学院、一乗寺あたりですね。大体1100世帯ぐらいに配達しています。

従業員は何人ぐらいですか?

 基本店は僕ら夫婦で回しているんですが、配達はアルバイトが10人ぐらいです。

村上牛乳店

若い世代はあまり牛乳配達を受けていないイメージがあるのですが、どうですか?

 最近はメーカーの方も健康飲料ということで女の人向けにコラーゲン飲料とか、高齢者向けにグルコサミンなどの健康飲料に力を入れています。牛乳の消費量は年々減っているので。あとはヨーグルトですね。今ならR-1やLG という商品などに力を入れて、若い人達へ獲得しているというところです。子育て世代が子供に飲ませたいという場合も多いですね。高齢者の方々だけでは食事の量も減っていきますし、食事制限などもあって減っていますね。

新町商店街について

新町商店街の現状についてどう思われていますか?

 手の施しようがない。希望するところが全くない。自分は新町商店街の事業部の副会長で、色々な活性化をやっていかなければならないのですが、手詰まりです。
 京都市は各商店街に助成金を出していたり、私自身大谷大学の人たちと活性化をさせていきたいと考えていますが、商店街の人達だけではどうしようもない状態になっています。どこの商店街もそうですが、誰かリーダーがいて引っ張っていくのは稀なんです。リーダーが辞めてしまうと元に戻るし。

 僕の理想は、各店舗が遊び心を持ってお客さんとやりとりやイベントをすることです。仕入れすぎたから特売日とか。それを各店舗がやってくれれば商店街が盛り上がるのですが。商店街がやっていくだけでなく、各店舗が声をあげてほしいと考えています。

新町商店街について今後どうしていきたいと思っていますか?

 商店街は元々ポツンポツンとあった店が集まってできた街なんですよ。でも今はスーパーやネット通販など、便利なものがたくさんありますよね。そんな中、商店街で買い物をしましょうといってもなかなか難しいんですよ。 
 だから、買い物だけじゃなくて何か人が集まる仕組みづくり、帰りにお買い物もできるよねというような発想をしていかなければ。商店街はお買い物だけじゃなくて、ちょっとした近所の人が集まる通り。それでちょっとしたお買い物ができる場所という状態にしたら面白いんじゃないかと思いますね。
 たまに脱サラして喫茶店とかカフェをしようという人がいるけれど、新たに魚屋さんやお肉屋さんをしようという人はあまり聞かないですよね。精製の問題とかもあるんですけど、そうした店が一度なくなってしまうと復活しない。だから守らないといけないんですよ。それが商店街共通の課題だと思いますね。

北大路には大きい商業施設がありますね。商業施設は商店街の近くに作られるパターンが多く、計画時に地域住民の賛否が分かれたりすると聞きます。商業施設ができてから商店街の店舗にはどの様な移り変わりがありましたか?

 売り上げは下がったと聞きますね。商業施設ができた頃はまだ自分は京都にいなかったのですが、売り上げが下がって店を辞めたという人の話も聞きます。
 おっしゃる通り商業施設は商店街のある場所の近くにできるんですが、商業施設ができると周囲の商店街の店が潰れて商業施設の一人勝ちになります。しかし、何年かするとその街自体が高齢化して住民が買い物できなくなります。すると商業施設も売り上げが下がって撤退する。そうなると商店街は潰れている。街は高齢化している。買い物する場所はないという買い物難民が増えるということが起きるんです。
 商業施設側も営利目的なので仕方がないんですが、本来は地域の住民もそういうことを考えておかないといけないんです。買い物の利便性には勝てないが、5年後、10年後にそのツケがくるかもしれないということも考えておかないといけないんですよね。特に田舎の方ですね。中々難しいですけどね。商業施設ができてむしろ人が来やすくなったところもあるので、時代といえばそうなんですけどね。

地域との関わりについて

先程おっしゃられた事業部の副会長になった経緯と、今後どうやって動いていきたいかについてお伺いしたいです。

 元々、新町商店街の企画事業部に属していました。そこでやってたのは年間4回売り出しのチラシを配るというものだったんですが、もうちょっと他のやり方はないのかと思って、そこから始まったんだと思います。チラシを印刷する業者ばかり儲かっていると思ってね。色々やろうよとやっていたら京都市の方からも声をかけてもらえるようになって、大学生との事業とか、助成金とかに参加できるようになったというところです。地域については小学校や幼稚園がたくさんあるんで、安全のために防犯カメラをつけるというのもやっています。

 商店街としては先ほども言ったように買い物だけでなく、ちょっと何かワクワク感を持ってというか、そう言った期待感を持ってもらえるようにしたいなと思っています。
 最近近くで孤独死があって、会費を集める時に何回行っても出てくれなくて、おかしいなと思って警察を呼んだら亡くなっていたんですよ。2ヶ月前ぐらいに。最近多いじゃないですか、独居老人とかって。そうした人達って自治会に入っていないとか、町内会の集まりに顔を出さないとか、そういう人が多いんですよ。

 そこで「繋がり」が大事になるんですけど、そういった人たちに「繋がれ」と言っても繋がらないじゃないですか。どういう風にしたら「繋がり」を作れるか考えた時に、まずは一番低いハードルを設定しなければいけないと思っていて、それが何かというと、僕は商店街での買い物だと思うんですよ。全部を買わなくても、例えば牛乳だけは、魚だけはという風にすれば、お店の人と「繋がり」ができるのではないかと思います。商店街でそれをやろうというわけではなくても、そういう風な機能も商店街は果たせると思っています。店もお客さんの情報を共有しておけば、何かあった時にわかりやすい。そういった役割を果たしていければ理想的だと思います。

確かに、ちょっと買い物に来るだけで違いますね。

 定期的にお買い物に来ていた人を見かけなくなったら「あれっ?」て思うし、そうやって地域との繋がりを頑張って作るのではなくて、小さいところから始める。ちょっと小売店で買い物をするところから始める。商店街を頼ってくれたらなと。

一種の拠り所みたいな感じですね。

 いきなり町内会に入ってイベントに参加してもらうと、誰やって思われないかと思うでしょうし、参加しにくいでしょうし、そういった所できっかけ作りになれればなと。

その点牛乳配達ですと、毎日お家に行ってというところで、繋がりができやすかったりしそうですね。

 そうですね。何日も牛乳を取られてなかったりすることがあったら連絡できますし。早く気づいてあげられたらね。

商店街を買い物するだけの場所ではなくて、ハードルの低いコミュニティとして利用してくれたらその人とためになるし、今後の商店街のあるべき姿なのかもしれないですね。

学生とやってみたいこと

今後学生や若い人とやってみたいこと・やっていることはありますか?

 学生さんなどと色々なお話をしながら、作り上げていくというか、向こうは自分が持っていない知識を持っているので、それらをミックスしながら。 
 ただ、若い人はSNSをよく使うけど、今のお客さんは60代、70代が多いので、そこをどう擦り合わせるかですね。
 お互いの長所や短所を合わせながら作り上げていくということですね。だからイベントありきではないですね。

大谷大学と連携されているとお聞きしましたが、どのような連携をされているのでしょうか。

 大谷大学で広報や宣伝を研究されているゼミと、新町商店街をどう広めるかとか、どんなゲーム・イベントをするかということを話し合っているところですね。
 皆さんの通われている京都産業大学で、商店街サークル作ればええやん(笑)考えたことをここで実践できるんやから(笑)

商店街の理想像

理想の商店街というのはどういうものかをお聞きしたいです。

 ここまで言ってきたこと全部だけれども、商店街は近隣住民のため、近隣住民は商店街のためにお互いにやってあげる。Win-Winの関係を築いていくことですね。安く買うのも大事だけれども、商店街を助けるという感覚もちょっと持ってくれたらなと思います。

取材を終えて

 目先の便利さを追い求めることのリスクや、商店街が担うべき新たな役割について知ることができました。地域を活性化させるだけでなく、地域を、住民を守ることができるのも商店街が持つ「コミュニティ」としての役割ということを実感しました。
 買い物をする場所だけでなく、人々の拠り所となる様な場所になるために、自分達にできることは何があるでしょうか。

「北区盛り上げ隊」藤本 聡