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わたしたちが見たやまさん(元GS)#1

「詐欺師の靴は綺麗」

これは俺がまだ駆け出しの頃に先輩が教えてくれた格言みたいなもの。

なんだっけな、この先輩にあれどんな意味でしたっけ?ってLINEでもして聞ければいいんだけど何年か前に街からフケちまった。

金融上がりなんだけど、ゼニ溜めて独立してからはそれを個人での貸し付けに回し始めた人で、面白いのが詐欺師にもバンバンゼニを回すよ。

まだ自転車が漕げている詐欺師には貸すみたいなスタイルでさ、最近の時代の言葉でいうとポンジスキームの序盤戦に積極的に参加するというか、当然最後はパンクするのはわかっていても自転車の前輪がパンクする直前にはさらっと資金を引き上げるというか。

まあそんな人がいた訳。

対面した時に気力で上回りたいからみたいな謎理論で朝からコカイン吸ってるような人だったんだけどとにかく優しくて、ついでに動物が好きだった。

その頃俺は犬を飼ってたんだけど、その先輩に呼ばれて朝まで相手してた日に「やべえ、餌あげ忘れた」みたいな事を言ったらぶっ飛ばされたことあったな。

どうして飲みに来たんだって言われたけどそれはアンタが好きだったからだよ。誘われたのが嬉しくてついつい深酒をしたんだ。

その先輩がどうしてフケたかって言うと、一番いい時期にピカピカの詐欺師に引っかかったんだよな。

冒頭に書いた靴なんかは当たり前にピカピカの高級品で、勝鬨のタワーマンションの最上階を分譲で持っていて、都心の賃貸も高い部屋をいくつも借り上げていた。そしてどのマンションの駐車場にも高級車が並んでいた。

時計もとんでもないのをたくさん持っていて、政治家やら上場企業の社長連中の名刺もたくさん持っていた。

「こいつが金に困っている」なんて誰も思わなかったんじゃないかな。

金利も安いよ。確か月3%とかだった記憶がある。

闇金上がりの先輩からしたら驚くほど安い金利だし、俺なんか絶対貸さないね。

だけど当時俺は財布に十万円のズクがいくつかあれば幸せな気分だったけれど、先輩は十億近く持っていたからな。

もう先輩金を稼ぐのに疲れちまってたのかなあ。

五億の3%の金利だけで生活水準を維持しながら悠々自適に暮らそうとしたのか。

配当が一回滞ってから先輩がフケるまでは早かった。

俺はまだガキだったから後になって聞いた話ばかりだけど、海外口座がロックされてそれを引き出すのに証拠金が必要だかって言われておかわり入れてよ、その次に償還しないといけないファンドの期日が近づいているが件の理由で預金がまだロックされているからどうのこうのって言われたんだって。

このあたりから連絡もなかなかしてくれなくたったから、先輩がどういう考えでその後の行動をしたのかはわからないけど、まあ簡単に言うと人からゼニ集めてそいつに回し始めたんだ。

先輩がそのピカピカの詐欺師を信じてしまったのと同じように、先輩の金策相手もこいつなら大丈夫って思ったんじゃないかな。まさか先輩が金に困っているなんて誰も思わなかったと思う。すぐに返せるくらいの嘘もついてたんじゃねえかな。

後は言わなくても想像つくだろ?

詐欺師が飛んで、次に先輩が飛んだ。それだけだよ。

「詐欺師のSNSとブランディングは綺麗」

そんな話を思い出したのもタイトルにある通称やまさんの事件があったから。

週刊誌なんかでも記事になっていたが被害総額は一般的には二桁億と言われている。もう少し細かく言及している被害者と思われる人のアカウントでは十億と少しなんて言われているが、俺が調べた限りでは最低でも十六億二千万円の債権から逃げている。

この莫大な被害を叩き出したやまさんこと山本博章について、あいつを知る者による手記をリレー連載しようと思う。

当然俺は山本みたいなバカの詐欺に引っかかることもなければ被害者でもないが、どうにもこういうやつが気に食わない。

先輩を引っかけたやつに被る部分があるからなのかな?

あの時もそうだったんだけど、周りで提灯持ちする取り巻きみたいなのがたくさんいてさ、そういう連中も含めてイライラするな。

提灯持ちは詐欺師が詐欺師とわかると何事もなかったようにまた誰かの提灯持ちをする訳。

あのなあ、一個前にてめえが担いでた詐欺師の被害者に変なやつの提灯持ちしてごめんなさいとかないのか?

そんな事を考えながら駄文を書きなぐる深夜1時。

現代の詐欺にはつくづくSNSが至上のツールであるという事に俺は考えを巡らせている。

昔は足元を見られないためにピカピカの靴でも履いていれば良かったが、今はインスタグラムやツイッター、自分の生活の一部だけを切り取って綺羅綺羅とした印象を与えることも容易な時代だ。

今はSNSと周りの提灯持ち、本当に自分のものかもわからねえ持ち物なんかのトラップがあるからバカは引っかけやすい時代だよ。

やまさんはまずそれにマッチした。

あのバカがすごいのは、こういう詐欺師は対面した時にそれが捲られる事も多い中でそれに対する対策も用意していた事。

この話はまた次回以降で後述するが、簡単に説明するとあいつはマネーパートナーズという証券会社の偽サイトを作っていた。

そこらへんの詐欺師だと銀行口座や証券口座の残高を偽装した画像を作るくらいが関の山だろ?

しかしあいつは対面した時にログイン画面からターゲットに見せるんだよ。

これはきついぜ?

俺にしたって詐欺師とっ捕まえた時には、まず携帯開け、いくら持ってんだ、口座開いてみろってやるもんな。

当然画像フォルダなんかから残高何億みてえなスクリーンショットが出て来たって信じないよ。

でもログインからやられちまうとな。これは引っかかるぜ。

例えばだけど、誰でも銀行口座くらいは持っているだろ?

URL記憶しているやつなんかいるか?

目の前でログインから見せられて、「あれ?このURLちょっと違うんじゃないですか?」って言えるやつなかなかいないよ。一瞬だしな。

まあ根っからの詐欺師だよ山本は。

今回のリレー連載では、その山本がどうしてここまでの詐欺師になったのか、そしてどうして未だに逮捕されていないのか(されるけど)を、現在過去において複数の人物の視点で書いていきたいと思う。

愛媛県の小さな町で育って、岡山大学に進学したやまさん。

一生懸命ブランド物を買ってカッコつけるもののどうしても女にモテなかったやまさん。

しかり教育商材販売のテレアポのアルバイトを始めたやまさんはクロージングスキルをいつしか開花させるんだ。

テレアポ仲間の中でも飛びぬけた成績で金を稼ぎ出すやまさんはいつしか金の魔力に取り憑かれていく。

続く。

「次回はやまさん現代編」

本作ではまだ誰からも相手にされず金も魅力もなかったやまさんの過去編と、詐欺師全盛期に六本木の華となって調子に乗りまくっていたやまさん。

同時進行で書いていきたいと思う。

次回は六本木現代編。

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選手の妻 https://twitter.com/kintamabiyon

やまさんにシャンパンを入れさせ、そしてやまさんの家にまで行ったがセックスだけはさせずに、そしてやまさんは金をいつか投資させて回収させるつもりで狙っていたかもしれないのに最後まで金を払わせる側に回った強き女。

下記の選手の妻noteで第二話を公開予定。フォローよろしく。

じゃあまたな。よろしく哀愁。

俺にゼニなんか投げるならコンビニの募金箱に突っ込んでおけ。 ただしnoteのフォローとスキ連打くらいはしておくように。