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85 終わりの終わり、そして始まり

夫と別れ、その足で役場へ向かった。気持ちは明るく足どりも軽かった。

役場までの道すがら、助けてくれた多くの人たちの顔を思い浮かべわたしは泣いていた。何度も何度も、この騒動の間に多くの人に対する感謝の念で涙を流した。

不思議とこの間に悲しい気持ちから涙は流れなかった。

感謝でむせび泣きながら役場に入り、目に涙を溜めながら離婚届を出した。泣き顔のわたしを見た職員は、見てはならないものを見たと言わんばかりに目を背けた。

離婚という人生の転換期にはいろんな想いを抱えた人々がここで離婚届を出す。離婚が必ずしも悲劇、悲嘆、絶望ではないことをこの窓口に初めて立って知った。

希望、歓喜、未来、感謝…わたしの気持ちは前を向いていた。

そんな気持ちになっているなんて、想像だにしないよね?戸惑う職員を前に、今度はフフフと笑いが込み上げた。

泣いたり笑ったり、情緒の不安定なシングルマザーの出来上がりだ。

役場をあとにして、外気で大きく呼吸をして実感した。

終わった。

すべて終わったのだ。

終わったけど、これからが始まりだ。

長いようで短い4ヶ月間を走り抜けて、新しいスタートラインに立ったわたしは足取り軽くいつもどおり子どもたちのお迎えに向かう。

子どもたちにご飯を作って怒って笑って寝かしつけて。明日はまた明日の風が吹く。

新しい爽やかな風が吹く。

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