72 家の中に潜む詐欺師
こんな嘘の上にわたしと子どもたち家族の生活が成り立っていることに心底嫌気がさした。
母は母で、もっと早くわたしに事実を伝えれば良かったと嘆いていた。幸せな家庭で育たず、前の家庭も失敗した義理の息子を信じようとしてくれた、母の優しさにつけ込んだ犯罪行為。
わたしは不倫のことだけでなく、LINEで知った黒いお金のこと、我が家の家計のことなど全てを母に打ち明けた。
留学費用は同じ手口であの女性からも借りていること。その女性からは頻繁にお金を借りていること。
不妊治療費にはそれほどお金がかかっておらず、またわたしの事業は自分で立て直したことなど。
こうなってくると養育費に関しても、未払いなどが必ずありそうで、どうにか前妻にも連絡を取る必要があると話し合った。
結婚式で消えたお金と留学費用に関しては、借用書を作り夫にサインをさせ、返済させることにした。
未払い分の家賃はわたしが耳を揃えて支払った。
最後に母は静かに言った。
「オレオレ詐欺にひっかからないようにって毎日ニュースを見て思ってたけど、家に詐欺師がいたなんて。生きてきた中で1,2を争うショックだわ。この人生で、もうこれ以上の驚きはきっとないわね」