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74 養育費を支払う真っ当な男という演出

前妻からメールが届いた。

「仕事中にメールを見て動揺したため、失礼なお返事となりました。
帰宅して子どもたちに事実確認をしましたが、父親とは一切連絡を取っていないとのことです。
また子どもたちは留学したことはありません。そのためお金を借りていません。
養育費は、離婚後数回だけ支払われましたが、それっきり一銭も支払われていません。

お力になれればと思いお返事しますが、金輪際関わりたくないので連絡はしないでください」

感謝の言葉が見つからなかった。きっと元妻も同じ被害者としてメールをくれたに違いない。

留学のことは嘘だと踏んでいたが、驚いたのは養育費のことだ。

結婚する前から養育費は二人分支払っていると聞いていた。結婚した当初、我が家の家計はマイナス12万でスタートし、長男出産後には減額申請をしてマイナス6万となったはずだが、これは全てが嘘だったということになる。

切り詰めていた生活はなんだったのだろう。余っていたはずのお金はどこへ消えたのだろう。

しかもわたしへの嘘のみならず、夫の会社の人々や夫の友人、Zや釣り糸を垂らす女たちにさえも養育費を支払っていると伝えおり、皆一様にそれを信じている。

真っ当な人間であることを演出するために「養育費を支払っている」と方々で触れこみ、お金にちゃんとしている、子どものことを考えている、という輪郭が自然とできることを肌で分かっていたのだろう。

息をするように嘘をつき、嘘をついているという罪悪感すら感じていない人間の嘘はなかなか見抜けないのだと痛感した。

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