『俺の家の話』の話 第十八試合
リング設営での板や鉄骨の運び方を見ただけでそのレスラーの歩んだ道が分かる。
「いやブリさん、大丈夫ですよ!僕らでやるんで控室戻ってて下さい!」
その膝に仰々しいまでの装具を着け足を引き摺りながらリングの板を運ぶ、かつてはメジャー団体の期待のエース候補だったブリザード寿。
そんなブリさんを見て声を掛けずにはいられなかった…
『って本当ならなりそうなくらいリアルですね!』
と監督さんにお話しした寿一も参加する第一話の設営シーン。
本当にリアルだった。
ブリザード寿を演じる長瀬さんのその後姿は。
板の持ち方も一度教えれば理解し、まるで十年以上リング設営をしていたかの様な佇まい。
カメラが回ってない待機中に長瀬さんが板を肩に乗せるその後ろ姿。
それがまさに
『かつてメジャー団体に所属しながらも膝の怪我が原因で退団してインディ団体を渡り歩いた末にさんたまプロレスに辿り着き、若手やスタッフに混ざって設営から参加して少し哀愁が漂いつつも選手からは尊敬され愛されるブリザード寿』
その後ろ姿そのものだった!
リング板を担ぐその後ろ姿すら一瞬で演じる事が出来る。
思わず震えた!
文字通り背中で語っていた。
ん…?
背中で語ると言えば平田さん。
その平田さんも実は撮影に参加していたのだが…
それはまたの機会に語れ涙!
そんな俺の家の話の話。