『俺の家の話』の話 第二十二試合

終電でも終わらないかもしれない、そんな通告を受けて向かった道場。

いやいいけどさ、俺ら仕事の後にこれなんだよ?

定時なんてとっくに過ぎてるよ?

勘弁してよ…

限界を迎えつつあった私は道中そんな事を思っていた。

きっと勝村さんも同じだったのではなかろうか。

それは「プロレスシーンの撮影」のためのシュミレーション。

ここに辿り着くまで…

プロレスを題材にしたドラマということで長瀬さんがウエイトトレーニングやプロレス練習を始める。

長瀬さんが自主的に合同練習に参加。

ドラマのためのプロレス練習開始。

他の撮影が終わった井之脇さんの練習も開始。

台本の準備稿完成、制作サイドとプロレスサイドの折衝が始まる。

プロレスシーンの準備稿の訂正、調整。

制作サイドから訂正案届く、更に訂正。

井之脇さんの練習も週に何度も行われる様になる。

道場でプロレスシーンの調整。制作サイドの希望、リアリティ、現実味などの調整で何度も。

第一話のプロレスシーン完成、撮影シュミレーションのシュミレーション。

スタッフさん、勝村さん、翔太さん、時に勝俣、上野などにも来てもらう。

スタッフさんが三方向からスマホで撮影する中、仮のプロレスシーンを何度か再現し撮影。

監督さんやプロデューサーさん、長瀬さんなどで確認、訂正。

後日また集まって撮影シュミレーションのシュミレーション。

同じ様に三方向から撮影しつつ何度も仮のシーンの再現。

を経てやっと今回の一行目に戻るわけだ。

ここまで既に数か月。

この時点で我々は我慢の限界レベルに達していた訳だけど。

金子監督もいらしたここで初めてお会いしたのがカメラのIさん!

何回か目に書いたIさんです!エンドロールに名前出てるから別に良いんだろうけど一応イニシャルで!

初対面では怖すぎてお話も出来なかったけどサムライみたいな仕事っぷりと小粋なジョークが素敵なIさん!(後日恐る恐る話しかけたら信じられないくらい優しかった)

もうね、1シーンというか1カット1カット凄いんですよ。

これはこっちから撮る、でもこっちからもあっちからも撮る。

あとは理解出来ない言語で話してたところもあって全ては再現出来ないけど。

延々とそれを話して決めていくわけ。

我々も「あ、それならこちら側からロープに振れば…」とか「この技ならどうこう…」とかやるもんだからなかなか終わらない。

結局終電なんかとっくに無くなってみんなが車やらタクチケやらで帰って行ったのです。

この日だけでも大変なのにここまで数か月!何度も言うけどね。

私はね、ここで感動してしまったんです。

ここまで徹底するんだと。

これが最高峰の仕事のやりかたなのかと。

この日から考え方が変わったのです。

これは我々の100%で応えていてもダメだ、200%で応えないと。

それでも結果80%かもしれないと。

ここから一気に歯車がかみ合い好転していったので…

と思いますがそう甘くもないのが現実の話。

そして冒頭の定時どうこうの話で言えばTBSさん側の皆様も同じだったのでしょう、多分。

いや、もっと大変だったと思います。

それなのに我々のせいで時間が押しても嫌な顔一つせず。

それどころかいつでも笑顔で。

ありがとうございます、本当にありがとうございます!

私あれ以来全力も全力以上の全力で立ち向かっております!

さてここで一つ。

ここまで用意周到に進められた撮影現場でADさんに技をかけて怪我させるなんて有り得るかな?

多い時でレスラーが10人弱、少なくても3人と私がいた中で、わざわざADさんにカメラチェックで技をかける必要があるかな?

1月末に都内の複合スポーツ施設で撮影?

騒然とした現場?どこ?

舐めんなよ。

そんな俺の家の話の話。



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