『俺の家の話』の話 第四十九試合

その道のプロが集まるドラマの現場

現場の皆様の仕事っぷりはプロレスの現場にも通ずるものがあると思っています。

「なんでこんなに殺伐としているんだ」

初めて撮影に参加させて頂いた時にそう感じた覚えがあります。

返事一つにしてもまるで部活を彷彿とさせる大きな声。

現場には随時「今何をしているか、何を待っているか」などを状況を伝える声が響き渡り、少しでも間が空くと「今何待ち?」と苛立った様な声が耳に刺さります。

同じシーンなのに背景が変わってしまってはいけませんから、その場に置いてある物を一つ動かすだけでも相当気を使わないといけません。

何か指示が飛ぶと男女問わず動けるスタッフさんが我先にと走って向かいます。

逆に私は先輩を待たせてるのに全力で走らない若手に何度注意をした事か…

プロ集団がそれぞれの100%を追求

台本をみるとスタッフさんの欄はその仕事ごとに細かく分類されています。

またそれぞれの所属先が書いてあってかなり多くの会社から人が集められてる事が分かります。

きっとそれぞれの職人さん達がそれぞれの会社の看板を背負い常に完璧な仕事を目指しているのでしょう。

会社の為に、ドラマの為に、そして自身の為に。

様々なジャンルの職人さん達がこぞってその力を見せつける、その結晶が一つの作品になるのだと思います。

時には衝突もあるのでしょうね。

我々も知らずに幾度となくスタッフさんをイライラさせたりガッカリさせたりしてきたのでしょう(ごめんなさい)

100%やって当たり前、常に完璧を目指すのが当然、そんな世界です。

少しロープが緩い、キャンバスが張れてない、その状況で設営を終わらせようとした練習生に「別に良いんじゃない、何かあっても怪我するのはお前じゃないし」と言ってやり直させていた私の考えもあながち間違いではなかったのではないでしょうか(口うるさくてごめんね)

責任取らない時代に逆行する若手スタッフさん

最近なんとなく感じるのが「最後の責任だけ取らない」事が多くなっているんじゃないかと。

仕事をしていても肝心な部分だけ「それは聞いてないです」「〇〇さんにやれって言われただけなので」などと言われることが多い気がします。

とりあえず今はこの仕事をしてるけど「何かあったとき」や「最終的な」責任は負いたくない、そんな風潮でしょうか。

だからちょっとトラブルが起きた時にその対応はなるべくしたくない、名指しされるまで動かない。

そんな中でとにかく自ら全力で動いて対応するスタッフさんを見て感激したのです。

そう言えば「どんな時でも自分が一番下だと思って仕事をすれば間違いない」という先輩レスラーの言葉がありました。

常にそれを頭の片隅に置きながら忘れている、それが私です(この章は自分に対して言ってるのかしら)

数時間かけて出来上がる珠玉の数十秒間

先日放送されて反響の大きかった石井さんの試合シーン。

プロレスの技を掛けているシーンだけなら数十秒だったかと思います。

ところがその数十秒の撮影に掛かった時間は練習やシュミレーションの時間も含めると半日くらいになります。

そこまでかけて作り上げる数秒。

どれだけ儚くどれだけ素晴らしいか。

しかもその数秒の為に何十人というスタッフさん達がそれぞれのプロの力を存分に発揮しているのです。

勿論我々プロレス側の人間も。

そう言えば撮影が始まる前のシュミレーションの日。

DDTの道場で行われたそれにTシャツ、ハーパンの女性スタッフが一人。

聞くと「何かあったら私が動けるようにしています」いや、そんなの私がやりますから。

それくらいの全力、の上の更に念のため、なのです。

とにかくよく聞く「確認」

現場にいるとよく聞くのが「確認」という言葉です。

何をするにしても「確認」「確認」

「俺がさっき言った時になんで確認しないんだよ」

「確認した?」

「確認」

「確認」

先ほどのロープの緩みやキャンバスの張りの話も大事なのは「確認」

少しでも不安や疑問に思ったら「確認」

基本的な事ですが本当に大事な事ですよね。

後悔するくらいなら確認。

きちんと確認しましょう(お前もな)

これを若手に徹底させれば全てが上手くいくはず。(はず)

明日も頑張ろうと思えたあの日

撮影の為の練習の日。

全てが終わり雑談中に長瀬さんが立ち上がりました。

「じゃ周ちゃん、俺お先に失礼するわ」

勝村さんに一言。

「皆さん今日はありがとうございました!」

みんなにお礼。なんて良い人だよ!

「翔太君、ありがとうね。お先に失礼します」

「レッカ君もありがとう!」

!!

「石井さんもありがとうございました」

!!!

「木曽さんもありがとう!お先です」

!!!!

これだ!この素晴らしさだ!

私も見習おう!

そして今日。

興行が終わり途中先輩を送りつつ事務所まで車を運転し荷物を下ろし。

最後車を車庫に戻してくれる若手に一言。

「あとお願いね、ありがとね」

…。

名前を呼ぶのが大事なんだよ、俺!(ごめんなさい)

学べ!

マナベと言えば以前長瀬さんがYOUTUBEでプロレス動画見てると最終的には大仁田さんと真鍋さんのやり取りに行きつくと言ってました…

そんな俺の家の話の話。



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