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風が冷たくなった

今年は、なんとなく、秋が長かったように思える。
金木犀は二度咲きしたように感じた。

そう思えるのは、いま冬を感じているから。
冬が来たな、と感じれたから。
秋がない今思えるその瞬間を。

昨日までを振り返ると風の音はカサカサと。
土と草の匂いが、放課後の匂いへと変換させ記憶を抉りだす。切ない、懐かしいを通り越す。

秋がとてつもなく大好きで大嫌いで大好きだ。

秋は良い。代表的に金木犀がいい。ベタだが、どうしたっていい。チェック柄の洋服がいい。衣替えのユニクロのカーディガンも気持ちがいい。穴だらけの袖から離脱する楽しい季節であった学生時代。
今はその習慣は無い。

冬もいい。ツンとする冷たい空気が風の匂いを強調する。鼻が痛いほどに嗅がせてくる。もういいよ、って思えるほどに冷たい。たまに腹が立つ。

ただ、空気が冷たいからこその欲する音が変わってくる。耳が痛い中、選んだ曲は景色と馴染む。記憶に擦りつく。大体が浸り酔いであるが、寂しいと美しいは近しい。怖いと不気味と美しいもまた、近しい。

寒くて腹が立つ、だからこそ響く音がある。

毎年の季節のプレイリストの常連達は今年もどっしりと俯いたままそばにいてくれている。

冬はこれからだ、花火がしたい。
夏は特に恋しくは無い。

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