公立病院改革4-10【ヘリのことを知らない】〈2007年〉医師・通勤用ヘリコプター事業
結局、某証券会社はこの事業に何の関心も示していないことが、理解できた。
無理もない、当の僕自身が、この事業で収益が得られる気がしていない。
それでも全国のヘリ会社、地方議会の期待を一身に集めたのは、
「この事業が、医師不足を解消してくれるかもしれない」
「この事業が、遊休ヘリを有効活用する一助になるかもしれない」
という、彼らの切実な思いからである。
注目する皆さんは、一様に「おカネの問題は大丈夫なのか」という点に関心を持っている。
しかし我々は、そこに回答や裏付けを持たないまま、当面走り続けることになる。
もう一つ、決定的な事項として、我々は「ヘリコプターのことを全く知らなかった」。
「速い」「高い」「少ない」
という牛丼に似たくらいの認識しかなかった。
カネも知識も皆無で、しかも会計のプロ集団(の一部)が始動している時点で、摩訶不思議な事象だ。
しかしボスの強力な推進力を前に、身内も外部者も誰も「ノーが言えない」雰囲気が完成していた。
そこに気持ちはともかく、オペレーションに関わる人間がいてしまったら、物事は進んでしまう。
優秀な政治家や役人がいても、思いある市民たちがいても。
いつの時代も戦争が無くならないのは、この程度の理由でないかと思う。
その後我々は、本件事業に関心を示してくださった全国の自治体、医療向けにヘリを扱う病院などに数多く赴くことになる。
その行った先々で、自分たちが何も知らずに事業広報を続けているという圧倒的な事実を、次々と突き付けられる。