【R18官能小説】緋い罠〜堕ちた人妻 第2話「緋の誘惑」その1
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〜罠〜
"いただいたおいしい紅茶がある"と言ったのは嘘ではない。知人からもらったフレンチ・ブランドの高級茶葉があった。夫はコーヒー党なので紅茶を飲むのはわたしだけだ。
リビングに案内した木島さんをソファに座らせた。
そのソファで毎日わたしが淫靡な行為に耽っていることを思い、恥ずかしさで身体が熱くなる。
「あ、ええと、支度しますからどうぞ寛いでいてください」
「はい。ありがとうございます」
リビングルームに隣接しているキッチンで紅茶の支度を始める。お湯を沸かし、ポットと茶葉を用意しながら、木島さんをさりげなく盗み見る。
…目が合ってしまった。
慌てて目を伏せ、キッチンボードの扉を開けてティーカープを取り出す。
何となく場を繋ごうと思い、以前から気になっていたことを聞いてみる。
「木島さん、よく昼間お会いしますけど、失礼ですがお仕事は?」
「ああ、警備会社に勤めているんです。夜のシフトが多いもので」
「警備会社というと、ガードマンですか?」
「いいえ。施設常駐のガードマンじゃなくて、何かあったら駆けつける警備員。ほら、ア〇ソックとか〇〇警備保障とか。テレビCMで聞いたことありませんか」
「ああ!知ってます」
テレビはあまり見ないが、その名前は知っている。結婚前に勤めていた企業のビルの警備も、その警備会社だったように思う。
警備員の男性は日頃から身体を鍛えていると聞いた。
…なるほど。それですらっとしてスポーツマンのような体型なんだ。
結婚してからどんどん太り始め、締まりのない身体になってしまった夫とは全く違う。
木島さんはシンプルな白いシャツにカーキ色のラフなパンツというファッションだった。今日も夜から出勤なのだろう。
よく見ると肩幅が広くて厚い胸板をしている。着やせするタイプかもしれない。背が高いからほっそり見えるだけで実際は鍛えた筋肉質の身体をしているようだ。
この男性的な身体に抱かれたら…どんな感じなんだろう。
服を脱いだ木島さんを妄想したことはあるけれど実際に見たことはないから…
お湯が沸いた。
熱湯をティーポットに注いでから二つのティーカップと紅茶に合いそうなお菓子を銀色のトレーに乗せてリビングへ戻る。
「お待たせしました」
「すみません。ずうずうしくお邪魔しちゃって」
「いいんです。どうせ…昼間はわたしだけですから」
どうせ、からあとは声が小さく震えた。
…わたしだけなんて。
あからさまに誘う自分が、恥ずかしく、そして少し哀しくなった。
木島さんの横に少し離れて座る。
ティーポットからカップへ紅茶を注ぐと馥郁とした香りが立った。彼の前に、どうぞとカップを置く。
「奥さまは?昼間はいらっしゃらないの?」
「パートに行ってるもので」
「そうなんですね…お子さんは?木島さんが面倒みてるのかしら。今は家でお留守番ですか」
「保育園ですよ。送り迎え担当は僕と妻のスケジュールによって分担してます」
「ああ…」
あれこれ詮索する質問ばかりしてしまうわたしに、木島さんは嫌な顔ひとつしないで、スラスラと答えてくれた。
会話が途切れた。
元はと言えば、雑談するために彼を家に招いた訳ではない。紅茶は単なる口実だ。
…でも…どうしよう。
…寂しくて誘ってはみたけれど。
「素敵なお庭ですね」
「えっ。あ…ありがとうございます」
急に言われたので、一瞬、何を言われたのかわからなかった。彼の目はリビングの窓から見える我が家の庭に注がれている。
「ガーデニングが趣味なんです」
「全部あなたが手入れをしているのですか」
「そう。主人は全く興味がないし、わたしはほとんど一日家に居るので」
「あのヒガンバナが見えますね」
ソファに座った位置から、勝手に一本だけ生えてきたヒガンバナの緋色が見えた。さっき見たときよりも蕾がほころんだのかもしれない。
「もうすぐ咲きそうですね」
「ええ…」
また会話が途切れた。
膝に置いた手をギュッと握ると少し汗ばんでいた。隣に座っている彼に、自分の鼓動が聞こえてしまいそうなほどドキドキしている。
紅茶のおかわりを勧めようと口を開きかけた時、彼が庭に目を遣ったまま、ポツリと言った。
「僕、この前、聞いてしまったんです」
唐突に放たれたその言葉になぜかドキッとした。
スッと立ち上がった木島さんがレースのカーテンを閉め、ゆったりした動作でソファーの元の位置に座り、ティーカップを弄びはじめた。
「聞いたって…何をですか」
「この前、こちらに回覧板を持ってきたとき」
「え…」
「どこからかかすかに女性の声が聞こえました」
「…」
「叫び声のような感じでした。門扉が開いていたので僕は中に入りました」
…まさか。
…まさか…そんなこと。
嫌な汗が脇の下を流れ落ちていく。
「玄関のドアに耳を押し付けてみたんです。あなたが暴漢に襲われているのかと思って。もしそうなら、いきなりドアを叩いて大丈夫ですかなんて叫んだら、逆上した暴漢が何をするかわかりません。そういう時は、こちらの気配を悟られずに近づいたほうがいい」
「…」
「でも、聞こえてきたのは襲われて助けを求める声じゃなくて、女性の…高い声で…喘ぎ声でした。ドアをそっと引っ張ってみても鍵がかかっていて開かなかった」
全身からサアッと血の気が引いていくのを感じた。
寒い。身体一気に冷えて力が抜けてしまった
彼は訥々と話し続ける。
「その、激しく喘いでいる女性の声は、あなたの声でした」
「…」
「僕はあなたが、暴漢に無理やり犯されているんだと思いました。だから足音を立てないように庭に回って、このリビングルームの窓から部屋の中を覗いてみたんです」
「えっ…見たんですか」
「はい。レースのカーテンが引いてありましたが隙間があったので」
「ああ…」
「カーテンの隙間から覗いたら暴漢の姿はなくて、この、今、僕たちが腰かけているソファーにユリさんが、生まれたままの姿のあなたがいて…」
「その先は言わないで…お願い」
…声だけではなく、いやらしい姿まで見られてしまった…。施錠してカーテンを閉めた家の中で何をしても、誰にもわらないと思っていたのに。
動揺していたわたしは、馴れ馴れしく "優莉(ユリ)" と名前で呼ばれたことに気づかなかった。
「それから僕は、毎日こちらのお宅に来て庭に回り、あの辺から…」
そう言って彼は窓の端の方を指さした。確かにカーテンに少しだけ隙間がある。
「えっ、毎日?」
「そう。毎日あのカーテンの隙間からあなたを見ていました。ユリさんがひとりで淫らなことをしている姿を」
手が震えている。手だけじゃなくて冷え切って嫌な汗をかいている身体も震えている。
「それをスマートフォンのビデオで撮りました。」
「…何ですって」
「ビデオです。このソファーに浅く腰かけて素っ裸で脚を開いているあなたが、バイブレーターを使ってオナニーをしているところを、カーテンの隙間からビデオで撮りました」
「そんな…ひどいわ…」
「本当です。嘘だと思うならご覧になりますか?」
彼の手にはポケットから取り出したと思われるスマートフォンがあった。
「もうやめて。そんなにいじめないでください…」
畳みかけるような冷たい言葉に身も心も震えてうつむいた。
すぐ隣に移動した彼が、膝の上で握りしめているわたしの手を握る。
ハッと顔を上げた瞬間に唇をふさがれた。肩を引き寄せられ思い切り吸われて、頭がぼうっとなってしまう。
成り行きに判断力が追い付かない。胸を押して突き放そうとしたら、逆に肩を強く抱きしめられ、耳元でささやく声が自身満々にこう言った。
「あなたは僕を拒めない。僕にはあなたのビデオ映像があるんですよ」
「う…」
「いやらしいことをしているあなたの動画を誰かに見られてもいいんですか」
「だめ。そんなことやめて」
力が抜けてしまった身体をしっかり捕まえられた。ゴツゴツした手が身体じゅうを這いまわり、指が食い込むほどいやらしい手つきでまさぐられる。
「ユリさん、いい身体してますね」
「いや…ん、んっ」
喘ぐ口をふさがれ、今度はヌルッと舌が入ってきた。思わず、その舌に自分の舌を絡ませた。夫からキスすらされていなかったわたしは、あっという間に燃え上がってしまった。
キスの合間にクチュという、いやらしい唾液の音がする。身体が熱かった。
「あ、いやっ、あ、ああ」
服の上から胸の膨らみが揉まれている。両手で大きく回すようにされて、わたしの唇からはしたない喘ぎがこぼれる。
「あなたの身体を見たい」
「…え?」
「服を脱いでください。あなたの素肌を、あなたの裸を、あなたの何もかもすべてを僕に見せてください」
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