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実家の庭先にツリバナの木がある。根元から細い幹が何本も立ち上がっているのは株立ちというそうだ。 スッと伸びたしなやかな風情の幹と枝。嫋やかな葉。特徴のない目立たない木なのに、秋になると、重たげにしならせたその細い枝先に変わった形の赤い実をつけ、目を引くようになる。 弾けた実から橙色の種がいくつかぶら下がり、その風情から呼ばれた名がツリバナ。よく見かけるピラカンサのように、たわわに実が成ることはなく、薄緑の葉の間にまばらに赤い実を散らした佇まいが、和を感じさせる。
香のかうばしさぞ、この世の匂ひならず、あやしきまで、うち振る舞ひたまへるあたり、遠く隔たるほどの追風に、まことに百歩の外も薫りぬべき心地しける。 〜源氏物語 四十二帖 匂兵部卿 ♢♢♢ 甘い香りを漂わせ、秋の訪れを実感させてくれた金木犀の花も、いつのまにか見頃を過ぎてしまったようだ。街を歩いてもあの香りは感じない。 花の香り、匂いは芳しいけれど、人の匂いはどうだろうか。潔癖な日本人は匂いに敏感で体臭を嫌う傾向にあるという。源氏物語に登場する薫君は女性を引きつける強