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既往症のこと

クロイツフェルト・ヤコブ病の症状のひとつに、「ミオクローヌス」という不随意運動がある。
自分の意思とは関係なしに手足が勝手にバタついたり、体がピクついたりする。

でもこれも個人差があるようで、主人は「これがそうかな」というものは見られたけど、それほどひどくは現れなかった。

主人はヤコブ病になる10年程前に脳内出血を経験した事がある。
その時の後遺症で体の右側に軽い麻痺が残っていた。
これが不随意運動の邪魔をして、ミオクローヌスもあまり現れなかったのかなと思った事もあったけど、結局はよくわからなかった。

もともと発病する人が少ない上に、またたく間に本人と意思の疎通が出来なくなってしまう病気なのだ。
「そりゃ治療法もなかなか確立出来ないだろうな」と、今になると思える。
100万分の1の確率に当たってしまった悔しさは変わらないけど。


考えてみれば、主人はよく病気をする人だった。
脳内出血で倒れた時は息子が高校に、娘が中学に入ったばかりで、
「これから学費がわんさかかかるな〜」と思っていた所だったから、生活的な不安はこの時の方が大きかったかもしれない。

お酒好きで毎晩のように宅飲みし、健康診断の結果がどんなに悪くても病院に行こうとしなかった。
何度注意しても全然言う事を聞いてくれなかったので、私は主人の医療保険に三大疾病(癌、心疾患、脳卒中)の特約をつけた。

結果これが大きな助けにはなったけれど、何か全然納得出来なかった。
「今から子供にお金がかかるのに、あなたが遣ってどうすんの!?」
主人に向かってそう言ったのを覚えている。

幸い、軽症だったのと、本人がリハビリを頑張ったので、半年程の入院と数ヶ月の自宅療養を経て、職場にも復帰出来た。

結局主人との結婚生活の中で、主人の為になんだかんだで救急車を3度呼んだ。

「4度めは私が運んでもらう時にするから
だからその時はちゃんと付き添ってよね」

一方的に交わした約束は、結局守ってもらえなかった。

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