「後悔のないように」はない
2018年2月以降、主人の症状はどんどん進んだ。
出来ない事が増えても、お世話が大変でも、本人が大人しくて穏やかな時はまだいい。
まだ全然大丈夫。
疲れても、しんどくても、体だけだから。
これが抵抗されたり、拒否られたり、悪態つかれたりすると、途端に疲労度は上がる。
メンタルが疲弊する。
気にしなければ良いのは解ってる。病気なんだから。
だけど悲しい。この悲しさは止められない。
主治医にも、「後悔のないように」と言われた。
でも経験したから分かる。
「後悔は絶対する」
自分に充分な介護が出来たとは思ってない。
ちっぽけで不出来な人間だし。
仕事も辞めれなかったし、全然優しくなかったし。
でも、たとえ仕事辞めて付きっきりで介護してても、やっぱり後悔はしたと思う。
だから、後悔して思い悩んだり、自分を責めるのは止めた。
今は、悔やむような事が湧き出て来た時は、「ごめんね」としっかり思って終わらせる事にしている。
4月の半ばを過ぎた頃には、主人は不安感からだろう、後追いみたいに私のそばについて来るようになった。
食事の支度でキッチンに立っている時も、側でウロウロするし、
洗濯物でベランダに出ている時も一緒に出ようとする。
危ないし、用事が進まないので、
「ちょっと離れて」と言うと「何でやねん」と怒る。
せめて、近くで椅子に座っててもらおうと座らせるのだけど、
どうしたら座れるかも分からなくなっているので、座らせるだけで大変なのに、
(認知症が進むと生活の中の基本動作すら普通に出来なくなって来る)
やっと座らせて2、3歩歩くともう立ってしまっている。
途方にくれて、この時期、どうやり過ごしたのかあまり覚えてない。
ただ同じ時期(多分)ストレスと自律神経の乱れのせいか、めまいと耳鳴りがひどかった。
私は運動らしい運動をした事がないのでスタミナはなかったけど、健康には自信があった。風邪も殆どひいた事ないし、嫌いだった学校も、仕事も体調不良で休んだ事はほぼ無かった。
人生で一番しんどいのは「つわり」で、入院経験はお産の時だけ。
だからあまり「自分が寝込む」設定が出来てなくて、この時も、
「うわぁ、ぐるぐるする、やばぁ」と思いながら過ぎてしまい、それで終わった。
まあ、疲れてたんだろうな、と思う。
でも疲れてたのは私だけではなくて、義母もこの頃体調を崩していた。
腸炎のような症状になり、ちょっと脱水になりかけているようだったので、頼まれた買い物をして持って行った。
次の日、近所のかかりつけ医で診てもらったものの、改善されてないみたいだという事で、
「大きい病院紹介されて今から行って来るわ。入院になるかもしれへん」
と電話がかかって来たので、仕事を早退けさせてもらって義母の向かった病院へ追いかけて行った。
幸い、入院にはならず、その病院でもらった薬がよく効いて、何日か後には回復した。
義母は私に余裕がないのを分かっていたので、最初義弟夫婦に連絡をとろうとしたようだけど、結局とれずに私に連絡して来た。
義母は私を煩わせた事を謝ってくれたけど、
私は病気が分かった頃、主人に言われた
「おふくろ、頼むな」という言葉を思い出していた。
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