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確定診断が出ない

指定難病『プリオン病』である「クロイツフェルト・ヤコブ病」は、殆どが原因不明の「孤発性」であるが、まれに「家族性」の場合もある。

「家族性」の場合も細かく分けられるようで、これも必ず遺伝するわけではなくて、
『プリオン蛋白に変異しやすい遺伝子を持つ』とか、なかなか素人には理解しにくいものだった。

長崎大学に送った主人の髄液検査の結果もかなりの時間返ってこなかったのだけど、
2ヶ月少したった頃に、
「とりあえず遺伝子検査の結果だけ返って来ましたが、遺伝子に変異は見られなかったので、家族性ではないようです」
みたいな事を言われて、心底ホッとした。


この病気は、感染症でもあるのだけど、実際感染する怖れがあるのは髄液だったり、脳だったりで、普段の日常的な生活や介護には何の支障もない。
でも病気自体の恐ろしさもあって、ほんの十数年前くらいだと、随分な差別を受けたらしい。

今では治療法こそないものの、いたずらに感染を怖がる必要はない事は分かっては来たけれど、
「古い考えを持つ人はまだいるので、息子さんや娘さんが結婚されるってなった時に、相手の御家族さんによっては良く思われないかもしれません」
と、病名の告知の時に主治医に言われれた。

「子供に恨まれるかなあ」と主人がポツンとつぶやいたのを、何かの時に娘に言ったら
「そんな事言うたら癌だって何だって遺伝かもしれんやん」と返されて、妙に納得させられた。


検査結果を待ってる期間に、主治医からセカンドオピニオンについての話もあった。
「もし考えているなら、カルテの貸し出しにも応じますよ」
とも言われたけど、子供達とも相談して、結局やめた。

その時診てもらっていた病院は市内では一番大きい所だった。
もしセカンドオピニオンとなると、更に遠くの大きい病院で、入院して一から検査…となってしまう。
主人の残された平和な時間を、再度の検査で費やしたくはなかったし、結果的にこの判断は間違ってなかったと思える。


そして2017年の最後の診察で、長崎大学に出してた髄液検査の結果がやっと返って来た事を知らされた。

結果は「陰性」

主治医によると、主人のように進行がゆっくりとした場合、陽性反応が出にくい場合があって、この検査自体、陽性と出れば陽性で間違いないけれど、陰性でも陰性とは限らないものらしい。

結局、確定診断は出ないまま、診断自体は覆らないという状況が、このあと数ヶ月続く事になる。

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