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「浸透圧」の話


読んでくれてありがとうございます。ただ今日の話は長いうえに詰まらないかもしれないので読まなくてもいいかもしれません。

今日は浸透圧の話をしようと思う。
魚を飼ったことがあるひとならご存じかと思うが、ある魚を新しい水槽に移すときや濁った水槽の水を新しくしようとするときに「水あわせ」という作業が必要になる。
環境の変化に弱い魚は水質、おもに水温と浸透圧の変化によってショック死してしまう。
そのため水槽に魚を入れる際には点滴法といって、まさに点滴のように魚の元いた水に、新しく入れる水を一滴一滴落としいれていき徐々にその環境に慣れさせるという方法をとるのだ。

また高校の生物の授業を頑張って思い出せばイメージしやすいかもしれない。
細胞が半透膜(フィルターみたいなイメージ)を通して網目を通れる小さな分子が浸透圧の低い方から高い方へと移動するというアレである。

私は常々、人間は水中に棲む生物ではないが、それでも固有の「浸透圧」と呼べるようなものの中で生きている動物だと考えている。ここでは仮に「浸透圧」と括弧に括って通常の浸透圧とは区別しよう。そして「固有の」としたのはその浸透圧には平均はあるかもしれないが変化や偏りがそれぞれ人によって異なるという意味で用いた。

たとえば普段何気なく使う「圧がすごいな」とか「圧迫面接」とかの表現でわかるように、人間は日々、環境(人間・非人間も含め)から受けとる何らかの圧を感じながら生きている。しかしこの圧というのは、全くもって悪いのかというとそうでもない。それは一定程度なければ、完全に弛緩して広がり拡張しきってしまう。拡張した「私」は「世界=私」になってしまう。
逆に圧が強い(「重い空気」とも表現される)ときには「萎縮」して「身の縮こむ」思いをする。もちろんこの圧は逆に「身が引き締まる思いです!」とか「背筋をただされました!」とかいう前向きな表現になる場合もある。(もしかするとそれは言葉上だけかもしれない)
この圧があまりに高すぎると押し潰され「世界に殺される」ことになる。「間違っているのは俺か世界か!?」という問いに普段は行き当たらないが、もしかすると皆さんも一度や二度はそう言った気持ちになったことがあるかもしれない。(いわゆるセカイ系と呼ばれるジャンルでなくても、映画やアニメではやたらとこの手の葛藤を主人公がもっているところは気になるところだが)
前者が若者の万能感、何にでもなれる心性に近いとすれば、後者は、何にもなれなかった、これで良かったのか的なミドルエイジクライシス的な心性に近いとも言えるかもしれないけどそうとも言い切れない。
ただ、この「浸透圧」は加齢によっても変化するのかもしれないとも思う。
いずれにせよ私たちは経験的にすでにこの「浸透圧」を経験的に知っているともいえる。

言うまでもなく人間の皮膚は半透膜である。日々、お風呂上がりに私たちが化粧水をしっかり染み込ませるのはそのためである。
皮膚は私たちを覆って外側との一定の境界を定めてくれているものである。他者のまなざしを一手に引き受けるのも皮膚だ。人に触れたり触れられたりして、それこそ「重なって」も、自他の境界をひたすら曖昧にしながらも、それでも私と誰かを区切ってくれている。
それと同時にその出自は外胚葉であり、つまり脳や神経系と同じなのだ。
私はもともと肌が弱くアトピー性皮膚炎だったが、今でもストレスがたまると肌が無性に痒くなるし、肌が痒くなると全身の神経が逆立つような気持ちになる。

「水があわない」とはよく言ったもので場所場所で固有の「浸透圧」があり、それぞれの人間にあった「浸透圧」がある。
人間は半透膜の皮膚からいろんなものを出す。それは「浸透圧」の低い方から高い方へと移動する。つまり場の空気に流れ出る。そこでその場の「浸透圧」は変化する。例えばたまにだったり、少しの時間だったら耐えられるけど家で、街で、100回受ける入社面接で、自分に合わない浸透圧で生きて行くことは人間にとってもしんどく、ショック死してもおかしくない事態なのだ。

さてそろそろ1000文字どころか2000文字になってきたので、皮膚と浸透圧に関するスケッチはここくらいまでに止めておくことにしよう。まだまだ掘り下げが甘いが、気が向いたらこれからも考えよう。
以上の要点をまとめておくと

  • 生物は半透膜で自身と外界との浸透圧が調整されなければ生きていけない。

  • 半透膜を通過した溶媒によって「浸透圧」が変化することを日常の経験的に既に知っている。

  • その半透膜であるところの皮膚は神経系と同じ出自をもっている。

  • そして皮膚は他者と私を隔てる一つの境界線である。

  • 人間であっても魚のようにこの浸透圧によって生存を脅かされる事態になりうる。

さて、次回は是非もう少し柔らかい話にしたいものだ。

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