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住む場所が決まる

物件探しはなかなか難航した。すでに書いたように物件自体が多くなく、加えてペットを飼っていい物件となると絶対数自体が更に減る。
何回目かの案内をしてもらっていたある日、不動産屋職員アンちゃんが
「少し高いですがいい物件ですよ」と連れて行ってくれたの今のアパートだ。
窓から海が見えて遠くに観覧車や灯台も見える。絵に描いたような海辺の家だった。風通しも日当たりも良く、窓際のフローリングは日に焼けて色褪せていた。
こんなところに住めたらなぁと思った。
家賃は相場より高めだったが立地や雰囲気に勝るものはなく、何より妻の療養のために住環境は妥協はできなかった。
しかし残念ながらペットを飼うことは禁止らしかった。
連れていってもらう前に、アンちゃんからその情報を聞いて、
「ではなぜ連れていく?時間の無駄!」
とも思ったが、まぁものは試しに見ておくかと思い直し連れて行ってもらうことにした。
しかし、このときばかりはアンちゃんの「この感じ」も、結果的に事態を好転させることに一役買うことになる。

私と妻と猫がいるのでペット可の物件を探す必要があったが、物件自体はものすごく気に入ったので「猫はダメなんですね〜」などとôYAさんと話していた。
ôYAさんがフローリングや壁紙も人が入れ替わったら全部交換するという話をしていたので、妻が「交換しなくていいから住めないか?」ともう一押ししていたがôYAさんの答えはやっぱりNoだった。
次の日、物件探しの継続を覚悟しつつ京都に戻った私たちのもとに予想外の電話がかかってきた。
アンちゃんからだ。
「猫を飼ってもいいとôYAさんが言っている」と彼は言うのだ。
なぜか、ôYAさんは私たちのことを気にかけてくれたのか、私たちと別れたあと家族会議をして猫を飼うという法案を「可決」してくれた。
その代わりといってはなんだが、いくつか条件はあったが、それは些細なものに感じられたし今でもそう思う。
こうしてひとまずの「ホーム」を確保した私たちは赤穂に移り住むことになった。

しかし考えてみればみるほど京都とは違う。京都で出会ったôYAさんが入居者の入れ替えがあるたびに壁紙を変えているなんてことは聞いたことがない。ましてやフローリングを交換するなんて。退去時に帰ってこない敷金はどこへ行っているのか!?と思うような物件はたくさんある。

それに私たちのことを知っている人たちは、このあと私たちがôYAさんに誘われて一緒にサイクリングや梅仕事に繰り出すなんて想像しにくいかもしれない。こんなふうに苦し紛れに始めた転地療養に少し光が射しはじめていた。

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