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再録集:色葉言葉

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色をテーマに据えた短編をまとめています。各話に繋がりはありません。再掲元:個人誌「色葉言葉(いろはことのは)」2003/11/06
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#放課後

水槽に閉じ込める

退屈なだけの朝礼も終わって、温かな太陽の匂いがする教室。窓際に当たる陽の光は、ぽかぽか、と耳には聞こえない音を立てて眠気を誘う。 一緒に授業を受けるメンバーが変わっても、みんな見知った顔ばかり。 何かが物足りないような気がするけど、それは多分、浮き足立った周りにつられているから。 受験を控えた学年だし、部活だってもうすぐ引退。ちょっと寂しいな。 ……でも、しょうがないよね。 慣れ切った空気の中、この学校で迎える三度目の春。係決めでわたしが引き当てたクジには、少し汚い先生の文字

風と埃と蜜と翼と。

午後四時半の教室ではいつものように、先生が奏でる念仏のような声色で補習が進んでいる。それをぼうっとした頭に辛うじて流しこみながら、あたしは自然と聞こえてくる歓声に惹かれて窓の外を眺めた。 狭い一室に押しこめられた人の気も知らずに、文句を言いたくなってしまうほど清々しく晴れ渡った空の下では、補習を受けていない生徒達が部活動に励んでいる。 別に必要もないのに汗を流したがる——これは多分、すごく穿った見方——運動部の子達の考えはどうしても分からないけれど、そんなみんなを見ているのは