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生き残る作家、生き残れない作家 冲方丁

 音声と字面がおりなす「意味」の伝え方の工夫があり、それが「感情」を刺激するということを知る者ほど、巧みに文章を書くことができます。
 文章の巧者は、あるものごとを伝える際、相手の意表を衝く、常に興味を刺激する、面白おかしい気分にさせる、厳粛な気分にさせる、といった目的意識を持って書くわけです。
 特定の情報を伝えるだけでなく、相手の感性を揺さぶり、注目を持続させ、そして最終的なゴールへと導く。
 こうした目的意識にもとづいて構成された文章を、人は「巧みである」とみなします。読者は、自分が読む文章を操作できません。書き手の誘導に従うばかりです。
 文章も同じです。目的地と経路がしっかり頭に入っている者が書いた文章ほど、スムーズに、あるいは意図的な演出を交えて、読者を結論に導くことができます。

生き残る作家、生き残れない作家 冲方丁, p.47

聴覚・・・最も遠いものの接近や遠ざかりを感じ取る。
視覚・・・行動すれば手が届くものを感じ取る。(光線は聴覚よりも早く届く)
嗅覚・・・すぐ近くにあるものを感じ取る。(安全か危険かを嗅ぎ取る)
触覚・・・皮膚による接触を感じ取る。(安全か危険かの最終判断)
味覚・・・皮膚よりも内側、最も体内に近い場所で感じ取る。(安全なものだけ口にする)
 ホラーなど、危険な何かが接近してくる描写は、必ずこの順番で描写されます。なぜなら人が対象の接近を認識するのが、この順番だからです。五感が、天敵や獲物の存在を察知し、逃走か、捕獲を目的とした攻撃かを選択する基準として発達したことによります。

生き残る作家、生き残れない作家 冲方丁, p.p.62-63


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