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小説家になって億を稼ごう 松岡圭祐

第三章 魅力的なあらすじ

◆あらすじは誰にも見せるな

◆四十字×三行で物語を表現する

 あらすじを書く段階では、すでに原稿の下地になることを意識しておかねばなりません。頭から書くよりは、貴方の中に『想造』した物語があるのですから、まずそれを三行にまとめます。

 ひとつの行は四十字以内、どれも「5W1H」で書くようにしてください。すなわち「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「なぜ」「どのように」だけは、一行ごとにきちんと踏まえて書くようにします。

 それら三行を読み返しましょう。『想造』した物語全体が、三行で端的に表されているでしょうか。一行目と二行目で状況は大きく変化していますか。変化に乏しかったら、二行目に書いてあるのは本来、一行目に含むべき要素です。二行を一行にまとめ、三行目を二行に分解しましょう。各行の要素は重複していたり、また逆に何か重要なことが抜け落ちたりしていませんか。

 一行が四十字で足りないと思えたら、それは書き過ぎです。SNSの字数制限で削らねばならない時と同じく、無理にでも縮めてください。文法が崩れようと気にしないでください。

 物語を極端に短く要約すると、間違いなくこうなると思えるうえ、各行とも明確に変化しているのなら、それらが物語の「三幕構成(三部構成)」です。

◆自然で確実な「想造」のアウトプット

 三行はいずれも三幕の見出しです。行間をそれぞれ開けます。一行目と二行目の間は十行、二行目と三行目の間は二十行にします。

 これは第二幕が第一幕の倍の長さになるからです。三行目から下はまた第一幕と同じ長さ、十行だと思ってください。第一幕が25%、第二幕が50%、第三幕が25%ぐらいの長さと考えます。

 『想造』の物語を脳内再生しながら、三幕それぞれの要素を書き込んでいきます。第一章は十行、やはり一行の長さは四十字で、5W1Hの文章にします。十行で第一幕のすべてを書き終えるようにしてください。

 第二幕は倍の二十行を書きます。見出しに要約された第二幕の物語を、二十段階に分けるのです。「ドキドキした」「ガーンとなった」など、まだ原稿ではないのですから、自分で分かれば大丈夫です。

 最後に第三幕を十行書きます。この十行目で『想造』した物語をきちんと終わらせましょう。

 あらすじ作成の最終段階です。各行の間に、その状況で思い浮かぶあらゆる事柄を書き加えます。もう四十字という字数制限は要りません。5W1Hの原則も不要です。どの行間も思いつくまま、頭の中にあるすべてを羅列してください。場所、情景、聞こえる音、人物の顔や服装、何を考えているか、何が起きたのか、そこに何があるのか、どう思ったか、どう感じたか。これらも文章を整えることなく、形容詞と名詞のみであっても、体言止めでも構いません。第一幕の一行目から順に想起する必要すらありません。思いついた箇所を次々と埋めていきます。どの行間がどれだけ膨れ上がっても大丈夫です。三幕それぞれの面積の比率が変わっても気にしないでください。もう物語の流れの適正な配分は終わっているので、原稿を執筆した時には、また自然にバランスのとれた三部構成になります。今は『想造』したすべてを肉付けしていくことに徹しましょう。

 最初から最後までざっと読みましょう。思い浮かんだことが書かれていないと気づいた箇所に、さらに書き足します。

 ここまでの段階で、けっして文才を発揮しようとはしないでください。物書きのプライドから文章を整えようとしてはいけません。綺麗な文体は一見読みやすく、何かを作りあげた気にさせますが、自由な『想造』についてはねじ曲げられがちです。

小説家になって億を稼ごう 松岡圭祐, p.p.41-51

◆執筆がうまくいかない時の対処法
 文章表現がスケッチに似ている一方、執筆作業はデッサンに近いと言えます。最初に書いた文章が整っている必要はありません。パソコン上で何度も手を加えながら、しだいに体裁を整えていくのが普通です。読み返しては直していく、これは現代人ならSNSやメールでお馴染みの作業です。

小説家になって億を稼ごう 松岡圭祐, p.59

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