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パパのいないアメリカ映画 スタートレック イントゥ・ダークネス

アメリカ映画にはパパがいない。いつもパパを失ったり、探したりしている。

『スタートレック イントゥ・ダークネス』を観て、改めてそう思った。

エリア・カザン監督、ジェームス・ディーン主演の有名作『エデンの東』は、米国的父なし映画の古典だ。

父親に振り向いてもらいたい次男キャル。

第二次大戦勃発で高騰したレタスを売りさばき、一稼ぎした金を父親にプレゼントするが、あろうことか拒否される。

「戦争で稼いだ汚い金などいらない。長男の結婚の方がよほど嬉しいプレゼントだ」

なんぼなんでもそりゃないだろ的な心なき発言に傷ついたキャルは、ある復讐を思いつく…。

父との再会を望み、再会した父とのキャッチボールを実現する。大ヒットした「フィールド・オブ・ドリームス」の内容をかいつまむとこんな感じか。かいつまみすぎだが。

クリント・イーストウッド監督、ケヴィン・コスナー主演の「パーフェクト・ワールド」は、父が一度だけ送ってくれた絵ハガキをあてにアラスカを目指す。途中に出会った少年と擬似父子関係になり、精神的な父親とも言える保安官に追われる。そしてアラスカ永遠に訪れることはなくなる…。

ローマを舞台にした「グラディエーター」ですら、父を失った愚かな男が、父を得た男に復讐する映画だ。卑劣で残虐な皇子コモドゥスは、父アウレリアスに認められようとする。息子の危険性を知っているアウレリアスは、勇敢な将軍マキマムスを後継者にと考えている。それを知ったコモドゥスは父を殺める。「あなたが私を認めてくれさえしたら、世界を滅ぼしさえしたのに…」って、わかってないなあコモドゥス…。

ああ最初から最後まで出て来ない父親を慕い、父に近づき、最後に父の下に向かう究極のパパなし映画「ガープの世界」を忘れちゃいけない。今は亡きロビン・ウィリアムスの出世作にして代表作ですね。

枚挙にいとまがないパパなし映画の一角に、『スタートレック イントゥ・ダークネス』の座も与えよう。

巨大なエンタープライズ号の不時着に驚かされ、なんとなく頭でっかちで病弱なイメージを勝手に抱いていたミスター・スポックの空を駆け巡るなんぼなんでもな大アクションに胸踊らされ、いやいややっぱカーク船長と謎の優性人類カーンの呆気に取られる光速エスパーぶりにドキドキさせられる超面白映画。

ところがここでも父を失う。エンタープライズ号の船長になるきっかけをつくってくれた厳格なクリストファーとカークは死別する。

エンタープライズ号の乗船者名簿になかった科学士官キャロルは、モラルに反する実の父マーカス提督を見切り、やはり死別する。

なんでアメリカ映画にはパパがいないんだろう。

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