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描かれていないものが実は重要 映画「桐島、部活やめるってよ」
自伝でも、ホラー小説でも、気になるのは「描かれていないもの」だ。
デヴィ夫人がスカルノ大統領と出会った本当の理由だったり、邪悪な姉弟が出逢ったはずの出来事(ヘンリー•ジェイムスの「ねじの回転」)だったり。
極論すると、描かれていないものが魅力的なほど素晴らしい。
描き過ぎたり、説明し過ぎたりするとつまらなくなる気がする。
以下、ネタバレに注意。
映画「桐島、部活やめるってよ」には、桐島が最後まで登場しない(厳密には、一瞬登場したような気がする)。
何をやってもうまくいく桐島を巡る高校生たちの動きが描かれているが、桐島が何者か、最後まで分からない。
だからいい。
こんな美人のリサを放ったらかすような男はどんな奴なのか。
そもそもリサは桐島に何を言ったのか。
桐島がバレー部をやめた理由は?
桐島のことは何も分からない。
いや、最初は桐島周辺の人たちの意味不明な行動が描かれる。
しかも異なる視点から何度も描かれる。
最初はワケが分からない。
吹奏楽部の部長となぜ度々目が合うのか。
映画制作部のオタクと美女の接点は何か。
バレー部の連中はなぜリサに怒っているのか。
段々いろんなことが見えてくる。
部長がわざわざ屋上でサックスを吹く理由が。
映画制作部の連中と喧嘩する理由が。
ひろきが抱えている不満が。
みかが何に苛立っているのか。
そして、全てが最後に屋上で衝突する。
朝倉かすみさんの「田村はまだか」を映画「エキゾチカ」のアダム・エゴヤン監督が描くとこうなったりしたのでは?
「世界の料理ショー」のスティーブって誰なのか。
「刑事コロンボ」のうちのかみさんはどんな人なのか(これは残念なことに明らかにされちゃったのだが)。
「何を描かないのか」が、物語で最重要だったりするのかも。
映画「桐島、部活やめるってよ」は、そんなことを考えさせてくれた。
100%大推薦。
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