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世界中にある『パパと呼ばないで』 映画『コーリャ——愛のプラハ』

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 YouTubeで日本のテレビドラマ「パパと呼ばないで」を観て嗚咽した。

 しかし、このパターンには毎度嗚咽させられる。どういうパターンかと言ったら、「いやいやながら同居していた他人の子と、いつしか心の交流が生まれる」っていうやつだ。

 「ああ、『池中弦太80キロ』ね」と思ったあなた。正解。
 でも、日本だけじゃないんである。
 世界中でこのパターンは愛されているようで。

 最近ではドイツの『マーサの幸せレシピ』
 亡くなった姉の娘と同居せざるを得なくなった、いかにもドイツ人の堅物女が、ゆるゆるのイタリア男との交流を通して、優しくできなかった姪に愛を覚え始める(その後、米国でリメイク)。

 おやおや、中国にもある。『心の香』は、離婚した娘から預けられた孫と住む老人が主人公だ。

 『心の香』の嗚咽ポイント、シャワー室で幼い男の子が泣き出す場面を彷彿とさせるのが、チェコの『コーリャ――愛のプラハ』だ。

 他の映画がたいてい、血のつながりを持つ子との同居なのに対して、『コーリャ』はまさに赤の他人。
 舞台は共産圏時代だ。金目当てで偽装結婚したロシア人女性が、まさかの西ドイツ亡命。法律上の息子と同居しなければ秘密警察に偽装結婚がばれてしまう。
 初老の主人公は、やむを得ず同居するが、なにせ言葉も通じない。
 邪険に扱っているのだが、地下鉄で迷子になり、高熱にうなされる男の子の世話をしているうちに情が移る。
 
 実の子を可愛がるのは当たり前過ぎる。しかし、他人の子を愛する姿は、当然とは思えない。しかも、愛するまでに乗り越えなければならない壁がある。
 だからこそ、その障害を乗り越えた愛は真実に思える。
 その愛がひたむきなほど、心を動かされる。そしてクールな結末。

 人は一人では生きていけない。
 与えられるだけでなく、与えなければ幸せではない。
 一連の「パパと呼ばないで」パターンの物語に嗚咽するたびに、そう思う。

 ちなみに 同じヤン・スヴィエラーク監督のこれまた涙の傑作「ダークブルー」では疑似兄弟(親子?)の愛を描いていたし、飛行機のラストシーンという共通点もある。

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