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福岡市「大森亭」の皿うどんと餃子

「皿うどんか、それともかた焼きそばか」と迷わされたことは何度もある。
しかし、「皿うどんか、それとも炒麺(ちゃーめん)か」と迷わされるとは思わなかった。

福岡市内にある「大森亭」では、皿うどん550円を注文した。
都内でこの価格はない。皿うどん好きとしては見過ごすわけにはいかない。

パリパリに揚げた麺に、野菜のうま煮(餡)が載る皿うどんは、スープに漂う麺をすするのとはまた違う味がある。
暑い日には特にいい。
熱いスープで汗だくにならずに済む。
ビールのつまみになる利点もある。

この日は10月にしては暑い日で、「ちょっとスープじゃないな」と思っていたところだった。
550円で皿うどんが食べられるお得感も手伝って、心地良い迷いの末に注文した。

ところが出てきたのは、炒めた軟らかい太麺に肉や野菜が混ざったものだった。

「炒麺ではないか」

浮かんだクエスチョンマークに包まれて、皿の上をまじまじと見つめてしまった。
横浜をはじめとした関東地方では「(ソース焼きそばではない)焼きそば」、店によっては「炒麺」として出される料理のはずだ。

麺が軟らかい「皿うどん」があるとは思わなかった。
しかし、ある意味、名は体を表すとも言える。体通りの名である。
うどんに近いのはこちらで、むしろ揚げた細麺がうどんとはおかしくないか、という疑問の方がまっとうだ。

いや、美味しいし、この価格なので何の問題もないのだが。
見直すと「ヤキソバ(バリバリ)」というメニューもある。
つまり、「この皿うどんはバリバリではないヤキソバ」と受け取れなくもない。

考えているうちに、頭の中でヤキソバと皿うどんとかた焼きそばと炒麺がぐるぐる回りだし、混乱が混乱を呼ぶので思考を止めた。

後で調べてみると、確かに「軟らかい麺を炒めた皿うどん」もあることを知った。
なるほど九州では当たり前なのか。

町の中華。やはり深い。


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