![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/1012853/rectangle_large_75c6eb8c9c59a7b85a05ccda792dcdae.jpg?width=1200)
静かなる戦争映画『ゴジラ』
1959年に公開された映画『ゴジラ』のサウンドトラック盤(1993年に発売された『ゴジラ大全集』の1枚目)を聴いたとき、「あっ、ゴジラの足音って砲弾の音だ」と思った。
映画の冒頭、クレジットの背景に流れる「ドーン」という音である。最初は遠雷のようだと感じた。しかしすぐ、これは砲弾だと感じた。
このサントラには、ゴジラの来襲によって燃え上がった街で泣く少女の声が収録されている。あまりに切なく、怪獣映画のサントラ盤に収録する意味があるのか疑問を覚えたものだ。
しかし、映画を改めて見直すと、少女の泣き声の意味が理解できる。
恐らくどこかで誰かがすでに指摘しているだろうが、これは静かな戦争映画だ。
「暗喩」なんて言葉を使うまでもなく、東京湾から上陸するゴジラは「敵軍」に見える。燃え上がる街と逃げ惑う人々は、空襲を受けたように見える。
娘をかばう母親が「これでお父さんの下に行けるのね」とつぶやく場面さえある。公開は終戦後10年を経ていない。どう考えても、戦死した夫のことを意味しているはずだ。
映画を見て改めて気づいたのだが、ゴジラが登場する前にこの「砲弾音」が響く。
海の中からまだ姿を見せていないのに、足音だけが響くのである。
物理的にはあり得ない。でも心理的な効果は絶大だ。
砲弾音とともにゴジラは現れる。
そして『ゴジラ』は静かな戦争映画だと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?