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世界で最も美しいラブシーン? 映画「リトルオデッサ」サントラ盤

(フィリップス/2500円)

個人的完璧な映画。


ロシア系ユダヤ人のアメリカ移民を描いた『リトル・オデッサ』がそれだ。



真冬の路地でティム・ロス演じる殺し屋が何ごともなかったかのように男を撃ち殺す冒頭から、その悲し過ぎて涙さえ渇いてしまうラストシーンまで非のつけ所がない。



ロシア系マフィア(米国移民でマフィアを作らなかったのは日系人だけだそうな)のボスの息子を殺してしまったティム・ロスが、病気の母に会いに街に戻って来る。

ボスはティム・ロスの父親に、その母親(ティム・ロスの祖母)の誕生パーティを祝う金を貸す代わりに息子を殺せと命じる。
うなずく父親。
ティム・ロスが雪の舞う路上で愛する弟とじゃれ会う、対立する父親に銃をつきつけ雪の中にうつ伏せにさせる、浮気の現場を見つけられた父親がティム・ロスに「俺はお前の母親を愛している」と呟く――。



いろんな場面が目に浮かぶ。
が、とにかくティム・ロスと恋人の濡れ場が忘れられない。

薄暗い恋人の部屋。
BGMはロシア教の賛美歌。それ以外に音響は一切ない。
声も唇が重なる音もシーツの擦れる音もない無音状態。ただ賛美歌が流れる。
痛々しいほど悲しくて美しいラブシーンに茫然とした記憶がある。

そんなハードボイルドな映画のサントラ盤。

楽しさや躍動や軽快さから限りなく遠くにある、重くて暗くて冷たい音の連続。
映画を観ていない人にお勧めできるようなものではないが、観た人にとっては美しすぎるサントラ盤だろう。

愛しあう2人の部屋へと急ぐ殺し屋。
それを察して兄の元へ急ぐ弟。

銃を手に白いシーツの舞う庭で息をひそめる主人公。
そして凄惨な結末。

その残酷過ぎて美しいラストシーンほどハードボイルドな場面を、僕はほかに知らない。



どうでもいいが、ベネチア映画祭銀獅子賞受賞作らしい。

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