占ってはいけない(禁忌)ストリクチャーについて
ある条件のもとで「占ってはいけない」という禁忌を持つ占いがあります。
ジオマンシーのストリクチャー
「悪天候のときは占えない」というジオマンシーもそうです。
ジオマンシーには、他にもホロスコープスプレッドで占うとき第1ハウスに「赤(ルベウス)」「竜の尾(カウダドラコニス)」が出たら占えない、という禁忌もあります。
この禁忌について、わたしなりに考えてきました。
ジオマンシーは古い占いですから、「夜に口笛を吹いてはいけない」のように迷信なのかも……? けれど夜の口笛も、元をたどると、本来口笛は霊的存在を呼ぶものだったからみだりに吹くことを禁じた……という説もあります。
悪天候が、人間の体に及ぼす影響を考えれば、占ってはいけないとされた理由がみえてきます。台風や低気圧のときに頭が痛くなったり、寝込んでしまう人がいます。具合が悪くならなくても、感覚が狂うかもしれません。
ジオマンシーは、とても繊細な感覚を使う占いです。悪天候のときに占ってはいけないというのは、占うと不幸になるとか、罰が当たるとかではなく、単に、当たりにくくなるということなのでしょう。
ルベウスとカウダドラコニスが第1ハウスに出たら占えない理由については、スティーブン・スキナー氏が書籍「Geomancy in Theory &Practice」で、第1ハウスに凶シンボルが出て相談者に不幸が迫っているときに占うと、その不幸を誘発してしまう可能性があるからと述べています。占うことでチャートが現実化してしまうというのも、面白い考え方と思います。
わたし自身、悪天候のときは、占う精度は低くなるかもしれないけれど、どちらにしろ自分の責任なのだから、どうしても占いたいなら、自分の体調を確かめながら占えばいい、と思っていました。
ところが、最近考えが変わりました。
古典占星術のストリクチャー
わたしは今、古典占星術を習っています。鏡リュウジ先生がコーディネイト&通訳をされている、マギー・ハイド先生のホラリー占星術講座です。
この講座で占星術の禁忌、ストリクチャー(制限)の話がありました。
占星術のストリクチャーで、一般的に一番知られているものは、ボイドでしょう。月が他の惑星と角度を取らないので、物事が進展しないネガティブな期間として知られています。
古典占星術のホラリー占星術では、月がボイドにあるとき、そのホロスコープは読めない(判断に適さない)のです。
ホラリー占星術にはほかにもストリクチャーがあります。
アセンダントが3度未満か、27度以上のとき。土星が第1ハウスか第7ハウスにあるとき。月がヴィアコンバスタのとき。
これらのとき、そのホロスコープがどんなに魅力的でも(思わず読みたくなる魅力的なホロスコープというのがあるのです)、読んではいけないとされているのです。
講座のテキストには「ストリクチャーを守ることは、最初は受け入れがたいことかもしれない」とあります。わたしもなぜなんだろう、と思いました。ところが。
それぞれのストリクチャーの細かい説明のあとの、先生の言葉に、ハッとしました。
「ストリクチャーは、占星術家を守るためにある」
もしかして健全な判断を下せないのかもしれません。あるいは不毛な占い相談でトラブルに巻きこまれる可能性があるのかも。
ストリクチャーは、「占ってはいけない」と占星術家を制限しているのではなく、「この問題を占うことで、占星術家に害が及ぶ可能性がある」と警告してくれているのだと。
これはスティーブン・スキナー氏のジオマンシーストリクチャーの解釈に通じるところがあります。どうやっても解決できない占いをすることで、占い師に悪影響があるのかもしれません。
さらにホラリー講座では、もうひとつ、重要な指摘がありました。
占星術ですべての問題を解決できると思うのは、思い上がりではないか?
ストリクチャーはその思い上がりに対する警告でもある。
目からウロコが何枚も飛び出た気がしました。
あるいは、頭をぶん殴られたような衝撃。
……その通りでした。占おうと思えばすべてを占うことができるはずと思い上がっていた自分を猛省しました。
個々の案件に関しては、その都度、事情も違いますから一概にダメともいいとも言えないと思います。
けれど、占いをしていて、ある条件の下で「占いをすべきでない」という場合があるということは、頭に入れて置くべきと心に刻みました。
ルーン占いのストリクチャー
今、ルーン占いの本を書いているのですが、ルーンにも、ストリクチャー的なものがあります。
それは、ブランクルーン(ウィルド)です。
答がないというのが、この「空白」というルーンの答です。
ルーン占いは紀元1世紀ころから存在するとても古い占いですが、本来24個だったルーンに、「空白」が取り入れられたのは近代になってからとされています。
今は占うべきときではない、占いで答を得ることはできない、という意味のブランクルーンも、まさに占いのストリクチャーです。
占いの禁忌は「なんでも占える」という傲慢な占い師への警告かもしれません。
あるいは、占い師を守ってくれているのかもしれません。
禁忌を回避して、大成功となった実例
悪天候で占えないというジオマンシーの禁忌で、最近こんな出来事がありました。
先日、書泉グランデさんで、ジオマンシーイベントが行われたのですが、季節外れの台風接近であいにくの雨模様。急きょ、占う予定を、占いではないパスワークに変更して、結果的に大盛況だったのです。
雨の日のパスワークおすすめです。(パスワークについては書籍「アラビアンジオマンシー」で詳しく解説しています)
一見、単なる迷信のように思える禁忌にも、考察してみると深い理由があるのだ、とあらためて知った出来事でした。
参考になれば幸いです。