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子どもたちの元気な姿を見て1日が始まる。

今回は、長年にわたり、東海村立石神小学校前で交通安全の立哨(りっしょう)を続けている津野田 實(つのだ・みのる)さんと髙橋 孝子(たかはし・たかこ)さんを取り上げました。
おふたりは、毎朝、石神小学校の正門と通用門に分かれて、校長先生や教頭先生と協力しながら、子どもたちが安全に登下校できるよう誘導しています。暑い日も、寒い日も、雨の日も毎朝続けられる秘訣や始めたきっかけ、子どもたちへの想いをじっくり伺ってきました。

子どもたちは地域の”宝”

インタビューの終盤、おふたりとも涙を浮かべながら心温まる思い出をお話ししてくれました。

まずは津野田さんから
「夕方スーパーで買い物していたら、小さな子どもを二人連れた女性に声をかけられて、『その節はお世話になりました。おかげさまでこんなに大きくなりました。ありがとうございます』と突然お礼を言われたんです。詳しく聞いたら,石神小学校の卒業生で,6年間、毎朝私に会ってあいさつしていたそうです。びっくりしたのと同時に感動して涙があふれてしまいました。本当にうれしかったです。長く続けてきた甲斐がありました」

津野田 實さん

続いて髙橋さん
「毎朝顔を合わせてあいさつしていると地域の子どもたちが我が子のようにも感じてきます。わんぱくだった男の子が帽子を取って『おはようございます!』としっかりあいさつができるようになったこと、近所の男の子が卒業式の帰りに私の家に花束を届けて『ありがとう』と言ってくれたこと、そして卒業式の記念写真も撮ってもらいました。遠足のお土産をわざわざ持ってきてくれた男の子等、一つひとつが大切な思い出です」

髙橋 孝子さん

まずはおふたりの横顔から

津野田 實さん
昭和16年生まれで当年83歳 栃木県出身
地元の高校を卒業後,日立製作所日立工場(日立市)に勤務
結婚後,昭和45年頃に石神小学校の近くに住居を構える
地域では高齢者クラブの会長を8年間経験
現在は村の統計調査指導員や石神地区の安全安心部会員、防犯協力員など幅広く活躍中

髙橋 孝子さん
昭和19年生まれで当年79歳 地元(石神地区)出身
東海村役場に39年間勤務 自宅は石神小学校のすぐ近く
現在,東海村国際交流協会の会員として外国人を対象に原子力機構内で日本文化の紹介や生花体験教室を定期的に実施
また、村内の小学生を対象に子ども生花教室を開催するなど多岐にわたって活躍中

立哨を始めたきっかけは

 (津野田さん)
子どもたち3人がお世話になったのでお返しがしたかった。それと、石神小学校は地形的に高いところに位置しており,東側や西側が急な上り坂になっています。見通しも悪いから、車が加速して走ってきたら、子どもたちが危ないなと思ったことが始まりです。立哨を始めたのが2012年頃から。当時、すでに立哨を行っていた宮本 忠雄(みやもと・ただお)さんと手分けをして毎朝立ち始めました。

 (髙橋さん)
自宅近くに住む孫が小学校に入学したことがきっかけです。はじめは孫を学校まで見送っていたのですが、そのうち、孫も卒業してしまいましたが、そのまま、立哨に切り替えて地域の子どもたちを見守るようになり、ほぼ10年になります。子どもは地域の宝ですから。

見守りのおかげで安全に横断歩道を渡れます

活動の具体的な内容を教えて下さい

立哨の場所は、当初は宮本さんが小学校の東側交差点、津野田さんが上り坂近くの通用門前、髙橋さんが神社前の正門を担当していました。数年前に高齢のため宮本さんが引退されたことと、少子化の影響もあり、残念ながら東側から来る子どもたちが少なくなってしまったため、今では、正門と通用門だけとし、校長先生や教頭先生と協力して立哨を続けています。

立哨の時間は毎朝、子どもたちが登校してくる7時半から8時過ぎまでです。なお、津野田さんは時間の許す限り、下校時も立哨しています。

津野田さんは、長年子どもたちに農園の指導も

学校近くの農園で子どもたちと毎年活動しています

実は、津野田さん、学校の近くに農地を借りて、小学生や幼稚園児と一緒にサツマイモやジャガイモを育てています。小規模ですが花壇もやっています。

具体的には5年生がジャガイモを、3年生と幼稚園児がサツマイモを担当しています。畑の耕作、畝作りは地域の農家さんの手を借りていますが、植え付けや収穫などは子どもたちと一緒に行い、収穫したものは、子どもたちに持ち帰ってもらっています。干しいもづくりにも一緒に挑戦しています。日常生活で土に触れる機会は少ないと思うので、ワイワイ・ガヤガヤ楽しむことを第一にやっています。
そのほか、石神幼稚園では”まゆだまつくり”や”竹馬作り”も行っていて、大変喜ばれています。

石神幼稚園で開催したまゆだまつくりを伝えるお手紙

健康の秘訣は

毎日、朝起きて食事をし、身支度をして通学路に立つ。『おはようございます』とあいさつをしながら子どもたちの笑顔を見るのが一日の始まりです。

毎朝の立哨が、自分にとっての使命感となり、歳を重ねても規則正しい生活を送ることができています。そんな機会をもらっている子どもたちはもちろん、地域の方々、学校の校長先生を始めとする先生方には感謝しかありません。

菊池校長先生(左)、髙橋さん(真ん中)、津野田さん(右)
子どもたちからの心温まるメッセージ

今回の取材を通して

津野田さんも髙橋さんも言葉には出しませんでしたが、インタビューを通して、この立哨というボランティアに誇りを持っているんだと感じました。
取材終了後、校長先生が私に小声で『子どもたちは、このおふたりに毎朝、元気をもらって1日を過ごしています。私や先生方も一緒です。本当に感謝しています』とお話ししてくれました。

私も今回の取材に関連して、3日間ほど立哨に立ち合わせてもらいました。子どもたちが笑顔できちんとあいさつをして登校していく姿に触れ、『石神小学校の子どもたちはすごいなぁー。これも毎朝の立哨の積み重ねなんだな』としみじみと感じました。

今回の取材は校長先生のご厚意で石神小学校をお借りしました

▼   取材・執筆・撮影担当者

田中克朋/取材・執筆・撮影
秋田県鳥海山の麓に生まれ、就職を機に茨城県へ。東海村には50年近く在住。会社員時代にタイ王国へ出張も含めて通算8年ほど駐在し、現在も現地の人たちと交流をしている。趣味は写真をベースにインスタグラム等のSNSで村内の風景を発信すること。「T-project/東海村スマホクリエイターズLab.」では若い世代に教わりながら楽しんでいます。

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