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成人式のおもひでポロポロ

今年もまたあらゆる地方でハタチの「あばれる君」が多く発生した。
そんなニュースを気にもしないで僕はひとり成人式のおもひでに胸を焦がしていた。

僕の生まれた街はとある会館で複数の中学校単位で召集がかけられる。
午前中、買ったばかりのスカイラインを運転してやってきたアイツは危ない運転ながら、
「桐崎の初恋のあの子も来てるのかな?」と笑いながらどこか楽しそうにしていた。

「居たとしても俺は彼女がいるし、あまり気にしないよ。所詮中学の時の話だろ?」と斜に構えて答えた。彼女については拙著「非モテキ」を参照してほしい。

その会館では来賓のお祝いの言葉と成人の誓いを代表が読み上げた。
僕たちは会館の二階席に座り、懐かしい友人と会話をしながら成人式を過ごした。
その時、一階席(ライブで言えばアリーナ席)では中学の時から変わらない「あばれる君」たちが袴でステージに上がっていた。

成人式が終わった後は各自の中学校に戻り、同窓会を兼ねた集会があった。
懐かしい体育館の風景とあの時には大きく見えたステージや扉がとても小さく見えた。
僕はよりによって中学3年の時に学級代表をやっていたせいで、司会を任せられていた。各クラス当時の学級代表が幹事をさせられていたのだ、やれやれ。
司会をするため前に行くと、「桐崎くん?」と声をかけてきた女性がいた。緑の振袖がよく似合う女性だった。

そう、初恋の人だ。

さっきまで斜に構えていた僕は両想いと知りながら手すら繋げず、一緒に登下校を隠れてするぐらいしかできなかった彼女を前に
「ひ、久しぶり!ごめん、司会だからまた後で!」と早口で話して逃げるかのようにステージに上がった。

「桐崎!頑張れよ!」とあばれる君たちの煽りを片手を挙げて答えたあと司会をしながらも目線はずっと彼女を追っていた。

そうして同窓会が終わり夜からはクラス会が行われた。彼女とは違うクラスだったから、結局会話もなく終わってしまった。
クラス会では酔い潰れるもの、喧嘩を始めるものなど動物園状態で疲れたし帰ることにした。
「悪い、実は明日の大学の講義は休められないんだ」と嘘をついて店を先に出た。余談だけどこのクラス会以降、会った友人は1〜2名程度だ。

駅前のコンビニでひとり酎ハイとお菓子を買って歩いて帰った。駅前から僕の家までは当時の通学路を通ることになるから、せっかくだし感傷に浸って帰ることにした。
その時、携帯が鳴った。当時はまだガラケーだった。僕は知らない番号からの電話は出ないようにしていたけど、予感がしたから電話をとった。
「もしもし?桐崎くん?携帯の番号、変えてなかった?」彼女からだった。当時は携帯の機種を変えると番号も変わる人がほとんどだった。僕はそれが嫌だったから少し機種変更にお金がかかっても継続した上で機種変更をした。

そのあと、彼女と中学の校門の前で待ち合わせをして30分だけ話をした。
お互いの大学のこと、お互い付き合っている人のこと、当時は恥ずかしくて手をつなげなかったこと、彼女は振袖から着替えたうえでクラス会に行ったけど面白くなかったから抜け出してきたこと、彼女のクラス会にはスカイラインの友人がいて、僕の番号を改めて聞いたらその当時のままで驚いたこと。
30分がとても短く感じた、彼女の父親は信用金庫の偉い人で厳しい人だった。
「ごめん、門限だ。」と彼女は言った。
「送っていくよ」と話した僕に

「当時は両想いって〇〇君(スカイラインの友人)からお互い聞いたんだよね。そんな桐崎君が『送っていくよ』って言えるなんて」と彼女は笑った。
「今日は成人の日だ、僕も大人になっているよ」と答えた。
「じゃあ家までお願いします。」と言った彼女の手を結局ハタチになってもつなげなかった。

今では「ハンドテスト」と言いながら簡単に手を差し出したりしているのだけれど。。

彼女は今、家族を築き子どもを抱いている。
その成人式の日の夜は2人だけの秘密だけど隠すほどのこともしていない。
今連絡をすればひょっとして男女の関係になるのかなと思うこともあるけれど、彼女に対してはそのような行動は取れないかなとも思う。


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