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免許返納!祖父よ。ありがとう

「じいちゃんが免許証を返納した。」

父親からのLINEに僕は心から安心した。
「追伸 じいちゃんはかなりショックを受けているので顔を出してあげてください。」ときたので、先週末にじいちゃんに会いに行った。

じいちゃんは自動車業界で働いていて、車が大好きだし、何よりドライブが好きだった。確かに運転も上手で、彼の運転で怖い思いをしたことは無かった。
いつも車の中は綺麗だったし、運転日報のようなノートが置いてあって、「どこへ、何キロメートル走った」ことを書かないといけなかった。
僕は自分の車を持っていなかったので、いつもじいちゃんの車を借りていた。
初めて免許証をゲットして当時付き合っていた彼女の家まで迎えに行った時も「〇〇の家、往復25キロ」とじいちゃんの運転日報に書かなくてはいけなかった。時にはラブホテルにも行ったけれど、それはさすがに書かなかった。

そんな車好きのじいちゃんが免許証返納するに至ったのは、体調不良と少しずつ認知症っぽくなってきたことだった。

去年の暮れにじいちゃんは免許証更新の試験を奇跡的にパスした。じいちゃん自身、「記憶テストとか全くできなかった」と言っていただけに、どれほど緩い更新試験だったのだろうかと今でも思っている。

今回、免許証の返納のために警察署へ、父親と叔母さん(じいちゃんにとっては次女)が連れていった。余談だが僕の母親は数年も前に亡くなっている。そのことは以前のブログを見てほしい。

そこからは警察官も含めて小一時間説得したらしい。ようやく観念して、免許証を返納したがかなり不機嫌になり、帰りに寄った寿司屋では一口も食べなかったそうである。

「じいちゃん、免許返したんやって?寂しいとは思うけど仕方ないね。どっか行きたい時は言ってよ。」と僕が話すと、ポケットの中から「これ、もらったんだよ。こんなんもらっても嬉しくないけど」と言って、免許返納証と書かれたものを見せてくれた。

そこには返納日以外は記載してあることが運転免許そっくりでもはや運転免許証そのものだった。返納の日に撮った写真もそこには載せられていたけれど、やはりじいちゃんは返納するべきだったなと思えるぐらい老けていた。
「じいちゃん、そういうことだよ。これからはタクシーやバスを使うんだね。そういうのも悪くないんじゃない?」そう言って僕は自分の家へ帰った。

僕は帰り道、なぜか少し切なくなった。
そういえば電車の方が便利なナゴヤドームですら車で行きたがった人だし、いつも洗車したり、運転日報を見たりしていた人だもの、免許返納という行為はきっと楽しみを奪われた感覚になるのだろうと。
それとじいちゃんの運転で行った名古屋港水族館や東山動物園、京都、高山。色々なところを思い出した。
そして最後に、僕が免許を取得して帰ってきたその日に「卒業検定だ」と言って、昼過ぎから名神高速道路を僕に運転させ、滋賀県までドライブした日のことを思い出した。
その時にもらったアドバイスを僕は今も守っている。

祖父よ、免許返納ありがとう。
あなたが教えてくれた運転のテクニックは僕が守っていく。そう、僕自身いつか免許返納する日が来るまで(クルマで)

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