肝芽腫が治るまで〜③夫と私〜
私が娘に入院食以外も食べさせることで夫との関係が悪化した。
夫は私に対してだいぶストレスが溜まっていたと思う。
私たちは「懐疑心が強くて短気な夫と、おっちょこちょいで楽観的な妻」と言う組み合わせで、もともと夫からの信頼はない。
だから、私が入院食以外の食べ物を食べさせていることが、心配でたまらないのだろう。
娘が病気になり、夫は以前よりもさらに私に対してキツくなっていた。
ある時はナースステーションの前で怒鳴り散らされたこともある。
一度怒ると手がつけられない。
どう気をつけても怒りの地雷を数歩ごとに踏んでしまい、私はもういっぱいいっぱいだった。
そんな頃だった。
夫は、発がん性物質が含まれている食品についてのまとめサイトを見つけて、私にLINEで送ってきた。
そこには
"コゲている部分に発がん性物質が含まれている"
と書かれてあった。
そして
「娘に食パンの耳は焦げだと思うが娘に食べさせてもいいのか、あとトーストにして食べても良いのか主治医に確認をとってほしい」
と言ってきた。
それも、担当チームの中でも上位の先生に聞くようにと言う指示もあった。
これまで入院食以外で口にするものは必ずひとつひとつ確認を取るように言われてきたしやってきた。
もちろん、入院食で出ているメニューであってもだ。
食パンもそれにあたる。
私は
(パンの耳を食べさせてはいけないなら、まず入院食に出てこないだろう)
と考えるのだが、夫は違う。
夫は少しでもマイナスな情報があると心配でたまらないのだ。
夫からは、
「僕と同じ感覚で娘を守ってほしい。それができないなら僕の言う通りにしてくれ。」
と何度も強く言われていた。
夫も私も娘を守りたい気持ちは一緒。
だけど価値観の違いがずっと苦しかった。
私は入院食を食べない娘に少しでも何か食べてほしかったし、病気に勝つための栄養をとってほしかった。
夫もと私は、食べるリスクと食べないリスクの平行線だった。
私は先生に質問しながら泣いた。
涙が溢れて溢れてとまらなかった。
きっと心が壊れていた。
先生は
「何度もお話ししているように、食事の制限はありませんが栄養を考えて常識の範囲内で食べさせてください。」
「パンの耳やトースト食べたからといって、腫瘍自体に変化があるという文献を見たことはありません。」
と話された。
加えて免疫の話をしてくれた。
「食べ物で腫瘍へ影響があるエビデンスはありませんが、笑うことで免疫が上がるエビデンスがあります。お母さんにできることは、体に良いものを食べさせることより娘さんが笑って過ごせる環境を作ってあげてください。」
と話してくださった。
もともと笑顔で過ごすことが大切だと考えていた私には救いの言葉だった。
その夜夫に先生から教えていただいたことを伝えた。
それから夫は食事のことに執着することは無くなった。
本当は笑顔で過ごすためにも責めるような言い方をやめてほしいと思っていたが伝えなかった。
話せばきっと「責めてない」と主張し、私の「理解不足」を責めるだろう。
夫との関係はさておき、娘はいつも明るかった。
本当に癌なのか?
と疑うほど、娘の体力は底なしだった。
この頃から消灯時間過ぎても眠れなくて、プレイルームでひと遊びしてから寝るパターンが始まった。
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