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【2024年大学入試数学】共通テスト数学ⅠA(本試)を解いてみた

受験に向けての勉強お疲れ様です。大学入試数学を個人的に研究しているきりんです。今回は2024年共通テスト数学ⅠAを解いてみたので、感想をまとめたいと思います。問題文は予備校等の公表しているものを参照してください。この記事では、問題ごとに自分の感じた難易度を付けています。まだこの問題を解いてないという人は過去問としての価値が下がってしまうので、見ないようにしましょう。

【難易度】
(簡単) A ⬅️ ➡️ E (難しい)
で表していきます。目安としては
Aレベル:正答率80~100%
Bレベル:正答率60~100%
Cレベル:正答率40~60%
Dレベル:正答率10~40%
Eレベル:正答率0~10%(捨て問)

1. 全体概観


今年の共通テスト数学ⅠAは去年と同じくらいの難易度であったと思います。出題は以下の通りです。()内のアルファベットは難易度の指標です。

第1問 〔1〕数と式(A) 〔2〕三角比(C)
第2問 〔1〕2次関数(C) 〔2〕データと分析(B)
第3問 確率(D)
第4問 整数(D)
第5問 図形の性質(C)

そういえば、必要条件・十分条件の出題が無かったですね。第1問・第2問は比較的穏やかな出題で、第3問〜第5問がやや手強い問題であったというイメージです。

2. 第1問

〔1〕$${\sqrt{13}}$$を不等式で評価する問題(数と式、A)

やはり最初の問題は今年も簡単でした。分母の有理化をしたり、不等式を変形したりしていくだけで答えが導かれるようになっています。
この問題では、$${\sqrt{13}}$$を小数第2位まで求める不等式評価の問題となっています。$${7<2\sqrt{13}<8}$$という評価だと整数部分が$${3}$$であるということしかわかりませんが、$${a=2\sqrt{13}-7}$$として小数部分を取り出して、逆数をとった値$${b=\displaystyle\frac{7+2\sqrt{13}}{3}}$$を評価することで、$${\sqrt{13}}$$を評価しようというものです。この方法により近似精度がだいぶ上がっています。
(*ここから先は発展的な事項が含まれます。読み飛ばしても全く問題ありません。)
実は、小数部分をとって逆数をとるという操作は平方根の近似にかなりよく効くことがあります。$${y=\displaystyle\frac{1}{x}\ (x>0)}$$のグラフを見てみればわかりますが、$${0< x< 1}$$の範囲にある実数の逆数をとると、値が大きくなります。本問の場合だと$${2\sqrt{13}}$$の小数部分はだいたい$${0.2\cdots}$$なので、逆数をとるとおよそ5となり、値が25倍になります。その値を不等式評価してもう一度逆数をとると、不等式の範囲が1/25になって、精度が25倍になるという原理です。小数部分が0に近いとかなりの効果を発します。例えば$${5\sqrt{2}}$$で同じことをしてみます。

$${a=5\sqrt{2}-7}$$
 $${b=\displaystyle\frac{1}{a}=5\sqrt{2}+7}$$

$${7<5\sqrt{2}<8}$$より、$${14< b<15}$$であるので、

$${\displaystyle\frac{1}{15}< a <\frac{1}{14}}$$
 $${\displaystyle\frac{106}{75}<\sqrt{2}<\frac{99}{70}}$$

となって、$${1.4133<\sqrt{2}<1.4143}$$とわかります。(小噺終わり)

〔2〕坂面に映った影の長さから電柱の高さを求める(三角比、C)

今年の三角比の問題は実践的な話題からの出題でした。影の長さと太陽高度を用いて、電柱の長さを求めよう、といういかにも共通テストっぽい問題です。一見難しそうですが、丁寧に図が載っていたり、求め方に関しても誘導がついていたりと意外と手のつけやすい問題だったと思います。最後のCDの長さを求める問題は一見ノーヒントのように見えますが、今までやってきたことと同じ計算をすれば答えが得られるという、共通テストではよくある問題構成でした。ただ、角度が2箇所登場する上、計算式がやや複雑となっているので、正答率はそこまで高くないかと思われます。

3. 第2問

〔1〕2動点のつくる三角形の面積(2次関数、C)

高校入試みたいな問題が出ました(笑)。非常に典型的な問題で、受験者はほとんどの人が一度は解いたことのあるパターンの問題です。開始時間からの時刻を$${t}$$とおいて、三角形の面積$${S(t)}$$を$${t}$$の式で表してしまいましょう。$${0\leqq t\leqq 3}$$のときと、$${3\leqq t\leqq 6}$$のときとで状況が違うことに気をつけましょう。共通テストとしては珍しく誘導が全くない問題ですので、やや苦戦したという人もいるのではないでしょうか。

〔2〕マラソンのベストタイム記録を分析(データの分析、B)

毎度おなじみデータの分析の問題です。答える箇所が少なく、速い人は5分くらいで片づきそうな問題です。最初はヒストグラムから最頻値、中央値を求める問題で、なんともないと思います。その次に箱ひげ図の問題がありますが、毎年出題されているのでほとんどの人が対策できていたと思います。その次がややトリッキーで、ある値$${z}$$を定義して、この値でデータを比較するということをしようとしています。実はこの$${z}$$は「基準化変量」という名前がついていて、この値に10をかけて50を足すと、模試結果などでよく見る「偏差値」になります。偏差を標準偏差で割っているので、平均値やばらつきの異なるデータ同士での比較に向いています。最後は散布図の基本的な問題でした。

4. 第3問

カードが$${n}$$回目で初めてすべて揃う確率を求める(確率、D)

題材自体が少し難しい内容で、難関大の二次試験で問われてもおかしくないような問題です。ただ、(1)で誘導がかなり丁寧に書いてあります。この考え方が理解できた人は(2)も一瞬で解き終わると思います。(3)でカードが4枚に増えて、かなり厄介になります。太郎さんと花子さんの会話がかなり大きいヒントになっていて、さらに(2)で求めた値も実はかなり利用できるので、慣れている人はこの問題も一瞬で終わるようになっています。確率の問題にしては問題文が長く、ルールもやや複雑なため、少し点数を落としても仕方ないような内容でした。

5. 第4問

$${n}$$進法タイマー(整数、D)

センター試験・共通テストとしては珍しく$${n}$$進法メインの問題が出題されました。$${n}$$進法という分野は、来年から共通テストの科目として追加される情報に少し関連のあるもので、慣れている人にとっては簡単でありがたい一方、あまり触れる機会が無かった人はかなりしんどい問題だったと思います。実はこの問題、出題側から見るとかなりの良問です。
(1)は10進法と$${n}$$進法の変換の問題なので確実に正解したい問題です。
(2)は最小公倍数を求めれば良いことに気付けば簡単です。
(3)は前問より少し難易度が上がり、自分で$${x,\ y}$$を設定して不定整数方程式を解くことになります。このとき、初期解を見つけるのが難しく、ユークリッドの互除法を用いるはめになります。
ということでこの問題は、$${n}$$進法、公倍数、不定方程式といった整数分野のあらゆる範囲を網羅できている問題となっていました。整数問題が出題されるのは今年で最後ですが、最後にふさわしい良い問題だったと思います。

6. 第5問

星形の図形に関する問題(図形の性質、C)

第5問のページを開くとすぐに目に入る星形の図形に多くの人が面食らったことでしょう。あまりこの図形見ないですよね(笑)。誘導がものすごく丁寧なので(1)はさすがに落とせない問題です。問題は(2)です。ある3点を通る円が他の点を通るか否かを判定しようという問題です。基本的に、円周上に点があるか否かを判定する方法は

  • 円の中心からの距離が半径と等しいかどうか調べる

  • 円周角の定理を用いる

  • 四角形の対角の和が180度であるかどうか確かめる

  • 方べきの定理を用いる

などといっぱいありますが、この大問では長さをメインで扱っているということもあり、方べきの定理を用いて判定していくようです。ここでは図形特有の考え方をするのでやや難しいですが、誘導に乗ってできるだけ点数を稼ぎたいところです。

7. 最後に

今年の問題はTHE・共通テストといった問題でした。あまり思考力を要する問題が無かった気がしますが、どうやら全国平均点が去年よりもやや低くなったそうです。第1問の三角比の問題で沼にハマってしまったのか、それとも第3問や第4問のような、やや難しい題材の問題に手を出してしまったのか。来年からは選択問題が無くなって、確率分野と図形分野が必答問題となります。図形がやや苦手な自分にとっては逃げ道であった整数問題が消えるので、少し悲しいです。

ここまで読んでくださりありがとうございました。受験生の方はこれからの勉強も頑張ってください。

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