003 サードプレイスと健康ランドとみかん

いい天気だ。歯医者と整形外科のはしごの後でマクドナルドに寄って、でもしっくりこなかったのですぐ近くのパン屋に移動して早めの昼ご飯を食べた。

マックとそのパン屋の違いはなんなのか。
日当たりと背もたれとテーブルの間隔。
特に日当たりは重要だなと気づく。わたしは隅っこのソファーでぼーっとする。

天井が高くて開放感があって落ち着くソファーのあるリビングが欲しいってずっと思ってたけど、まあ我々夫婦の稼ぎでは都下でそれを実現するのは夢のまた夢な訳で。店じゃなくってその店の中の、お気に入りの場所をみつけてこそのサードプレイスなんだなと思う。サードプレイスがあったら自分ちが少々狭くても汚くても心のゆとりを失わずに済むのかもしれない。

学生時代2ヶ月ほどバイトをした、地元の健康ランドを思い出す。
何処かに家があるであろうサラリーマンの山田さん(仮名)は毎日「ただいま」と言ってはローカル健康ランドのこれまたローカルな飲食コーナーのカウンターに帰ってきて、仮眠室で眠るとまた出勤していった。
仮眠室なんて仕切りもないし簡易マットと毛布しかないのに、サラリーマンなんだから何かの事情で家に帰れないなら帰れないでアパートくらい借りられそうなものなのに、彼は毎日毎日「帰って」くるのだ。当時は全く理解できなかったその行動を、いまなら少しくらいは理解できる気がする。いや、理解できないかもだけど、共感はできる。

春休みが終わって下宿に戻るタイミングでバイトを辞めてしまったので、山田さん(仮)のその後は知らない。
今日でバイト終わりなんですよーと言ったら食べてた定食のデザートのみかんを餞別にくれた。
お客様から物でも金でも絶対もらうなと言われてたけど最終日だしままいいやと受け取って、私の大学生活1年目は終わるのだった。